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2015/06/27

大葉とセクハラ。

子供のころは、「大葉」という呼び方は無かった。少なくともおれの周辺では、記憶にない。たいがい紫蘇の葉か、青ジソだったが、それにしても、青ジソは、あまり見かけなかった。

その青ジソが、いつのまにか、たくさん出回るようになって、いろいろな料理に薬味として使われることが多くなり、気がついたら「大葉」とよばれるようになっていた。天ぷらも、うまいね。

大葉は、庭に植えておくと、どんどん増えて食べきれないほどなるが、スーパーでは10枚ぐらいが小さな輪ゴムでとめられ、ときには小さなケースに包装され、高くても100円ぐらいで売っている。いまごろが盛りだ。

その大葉が、セクハラのニュースになっていた。

YAHOO!ニュース
「実習先の農家でセクハラを受けた」 技能実習「中国人女性」が実習先と監理団体を提訴
弁護士ドットコム 6月26日(金)21時5分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150626-00003306-bengocom-soci

「外国人技能実習生として来日した中国人女性(29)が、「実習先の農家でセクハラを受け、適切な賃金の支払いもなかった」として、茨城県の実習先農家の親子や、実習生の受け入れ監理団体(茨城県守谷市)に対して、慰謝料300万円と未払い賃金183万円の支払いなどを求める訴訟を水戸地裁に起こした。」

というものだが、読んでいくと、「女性が2013年に結んだ雇用契約では、女性が提示された時給は713円で、平日の労働時間は朝8時から夕方5時までという条件だった。」

その作業が、大葉の摘み取りなのだ。

「実際には朝8時~夕方16時に大葉を摘み取る作業があり、夕食と入浴後の17時からは、大葉を10枚ごとにゴムで束ねる作業に従事させられ、月によっては連日午前2時~3時まで続いたという。」

ところが、この大葉を10枚ごと束ねる作業は、「雇用先の農家は「これは(労働ではなく)内職だ」として、1束当たり2円しか支払わなかった」というものだ。「慣れた人でも1時間に150束程度しかできず、時給に換算すると300円程度」

これも、昨日に続く食べ物の国際問題の一つだが、「外国人技能実習」は、いまや「実習」という衣を被った、外国人労働力の導入の常態であり、この低賃金労働なくして日本の農業は語れないぐらいになっている。

それはともかく、この問題は、突き詰めていくと、人間と労働と食べ物に対する尊厳のことになると思う。

食育基本法で「感謝」を説いたりしているのであるが、けっして「尊厳」についてはふれてこなかった。そのへんにも、「感謝」の胡散臭さがあるのだが。

一方で、あいかわらずグルメな話やらはお盛んで、「よいこと」「よいもの」「よいひと」語りについては饒舌である。そこに、「よい市民」の選良意識や選良主義が潜んでいるのを感じる。

本来なら、よいもの美味しいものを愛する人は、等しく生活や人生や人びとを愛するはずだ。そうならないのは、「よいこと」「よいもの」「よいひと」語りに、「選良」の思想が潜んでいるからではないか。

キレイゴトの美味しい話しが咲き誇るのと背中あわせに、外国人労働者も含め、いわゆる「ブラック」な低賃金労働で成り立つ美味しい飲食は、空気のようになりつつある「よい市民」の選良意識や選良主義に支えられている。と、結論するのは、早すぎるかもしれないが、イヤなニオイを感じることは少なくない。

ともあれ、「よいもの」や美味しさには敏感な美意識が、人間の尊厳に対する美意識と連動しない、その断絶は、どう克服されるのだろう。

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