味の素、続き。
2015/06/25「味の素。」のあと、どうも味の素が気になっている。寝ても醒めても、ってほどじゃないが、いつも頭の隅にうずくまっているようだ。
一つは、「うま味」ってやつが、イマイチわかりにくいということがある。それがまた、コクと関係することで、さらにわかりにくい。うま味もコクも、汁かけめしのコアな味覚であるとして、『ぶっかけめしの悦楽』(1999年)『汁かけめし快食學』(2004年)に書いたが、そこでも、ダシとうま味とコクの関係は、イマイチわかりにくいものとして扱っている。
伏木享著『コクと旨味の秘密』(新潮新書、2005年9月)では、「そもそも世間でいう「うまみ」と科学の世界でいう「うまみ」とでは別のものを指していることがあります」と述べ、前者は「総合的なうまさとして「おいしさ」とイコールだったりしますが、後者はグルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸やイノシン酸といった具体的な物質の味です」と。そして、このように書く。
「うま味は、1985年にハワイで開催されたうま味国際シンポジウムで「うま味」(英語ではUMAMI)は学術用語として正式に認められています。アミノ酸の「うま味」は「コク」の重要な成分の一つです。そして、コクは「おいしさ」や「旨さ」の重要な要素であると言えば、これらの関係がおわかりになると思います」
ふーむ、まあ、わからんではないが、イマイチすっきりしない。コクは、「おいしさ」や「旨さ」重要な要素であるとしても、うま味成分だけで決まるわけじゃないだろう、とか、いろいろ言ってみたくなる(その件については、『コクと旨味の秘密』でもふれられているが)。早いはなし、とれたて野菜のコクや旨味などは、どうだろう。
そのへんは、前回ちょっとふれた、「料理に対する考え方の変化」や「「うまさ」を、どう考えるかということに関係する」のだ。味や味覚の構造や、それが単なる生理や感覚だと思っている「思想」は、なかなか複雑で、簡単にはいかない。
とにかく、とりあえず、本山荻舟先生の『飲食事典」を取り出して見た。平凡社、1958年12月初版1刷、1985年3月初版23刷、だ。
「うま味」については、当然だろう、掲載がない。
「味の素」については、けっこう書かれてある。
一般的に知られていることは省くと、「最初は昆布を原料とし、次に小麦、さらに大豆を主用するにおよんで、大量に生産されるようになった」
このあとに注目したい。
「調味料の融合に最も効力があり、料理が出来上がってからいれても、冷たいものに入れても効く点、便利である。塩・醤油・砂糖・酢など、おのおのの味が独立しあるいは併行して、いわゆる舌になずむ場合、ツナギとして少々加えると、渾然として一味になる。しかし、量がすぎるとまた味の素自身の味が舌になずむから、必ず適量を用いること」
このあと具体例をあれこれ述べていて、悩ましい論述もあるのだが、ようするに「真の渾然一味をうる」というのが、眼目のようなのだ。これは、言葉を変えると、「コク」でもあるようだが、ここの文章からは断定できない。
さてそれで、AJINOMOTOのサイトにある、「アジパンダ」Q&Aの「Q2.「うま味調味料」とはなんですか?」に対する答えは、こうだ。
http://www.ajinomoto.co.jp/aji/ajinomoto/qanda/index.html
………………………………
料理にうま味を与える調味料です。
料理にうま味を与えると同時に、素材の持ち味を引き立て、全体の味を調和させる働きがあります。
………………………………
こういうことについて、たくさんいる料理研究家やグルメのみなさんの考えは、どうなんだろうと、気になっているわけなのだ。味の素(うま味調味料)を排撃していれば、すむ話なのか。
| 固定リンク | 0