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2015/09/26

「C‐Dクラス」の面白さ。

品質さえよければ立地なんか問題にならないという選良志向のやりかたもあるだろうが、普通、飲食業は「立地商売」といわれるほど、立地がものをいう。

まちの魅力や面白さというと飲食業の店が話題になるが、一般的には、それを立地で見ることはしない。それが、普通だろう。おれのばあい、いつもそれが気になるのは、以前に立地調査もやるマーケティング屋だったクセで、前にも書いたが、まちを歩いていて店の立地と売上が気になることがある。

ここ東大宮に越してきて、まもなく8年、このまちは、なかなか面白い。住んでからわかったのだが、こんなところでと思うほど、飲食業の激戦地なのだ。

そして、この東大宮商圏は、都内や大宮あたりの大商圏とちがい、独自のローカルエリアを持っているために、割と動きが見えやすい。

立地を評価するのに、よく1等地、2等地、3等地という分け方をする。AからEで分ける方法もある。1等地やA-Bクラスは、地域のブランド性や歩行者の交通量など、場所の後押しがあるところであるが、ま、等級付けとか格付けとかいわれ、カタカナ英語だと、クラス、グレード、ランク、いろいろいわれる。ミシュランの星の数もそうだけど、日本のばあい、「上下意識」が強いので、それらを「カテゴリー」として見ることが、あまりない。

そのため、とにかく1等、A‐Bクラスがよいのであり、すべては、そこをモデルに目指すべきだ、そのモデルの条件を満たさないのはレベルが低い、テナことになり、あるいは、グルメなコンテンツで取り上げられる店も、たいがい、なんらかの意味で、このクラスであり、それなりにすでに商売が成り立つ客がついている「有名店」の位置にある。

ところが、実際には、2等以下、Cクラス以下の立地でも、商売して生きているひとたちがいる。では、その商売は、2等以下であり、Cクラス以下なのだろうか。

それがそれほど単純じゃないのは、商売は人間がやっているのだし、客も人間だからだろう。

最近、そういうことを考えさせる動きが東大宮で続いている、興味深く見ながら、ネットなんぞを検索してみたら、「悪立地商売」「2.5等地の儲かり店」なんていう記事がある。ここ1年ぐらいのことで、たとえば、こんなぐあいだ。

「飲食店の立地を1等地、2等地、3等地に分けるとすると、2等地は駅から200m以上離れたエリアで、3等地はそもそも勝負にならなエリア。2.5等立地とは、その2等地と3等地の中間的な立地ということ。/がっちりマンデーでは、その2.5等地に立地する飲食店のノウハウや強みなどついて特集していたので、まずはその内容をまとめてみました。」
http://knowledgestore.co.jp/food-doctor/?p=432

「《特集》 固定費圧縮、情報成熟時代の抜け道は「悪立地商売」 2.5等地 売れるロジック」「ネット社会の発達によって、外食ビジネスの「立地の常識」は大きく変わりつつある。むろん1等地の優位性が揺らぐことはないが、いまやスマートフォンひとつあれば詳細な外食情報がいつでもどこでも入手できる時代。外食ビジネスの「立地の常識」は大きく変わりつつある」
http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=11150100

これらは、ビジネスの視点からまとめたもので、それなりに説得力もあるが、もともと個人経営のばあい、3等地だろうが条件の悪いところでチャレンジする人たちはいた。それは、ビジネスの常識からしたら間違っている、ということだったのだけど、エラそうな「中央」の、たいがい1等やA-Bクラスを自認する人たちからの見方にすぎなかったのだ。そこが変わりつつあるようだ。

1年半ほど前に、東大宮駅から1キロほどのところ、東大宮商圏としてはギリギリの端で、商店街はないし、店はまばらで、そこから先は、そのまばらな店すら途切れ、駐車場を備えた集客能力のある大規模チェーンの外食店しか出店してないところ。2.5等地というより、3等地だろう。どう見ても、個人店がやっていけるとは思えないころに、飲食店ができた。

とりあえず入って見た。若い夫妻と、1歳ぐらいの赤ちゃんがいて、厨房を日本語が十分でない夫、客席を少し外国語的な話し方になる日本語が堪能な妻が、1歳に満たない子供を見ながらやっていた。味は、可もなく不可もなく普通だけど、メニューは改善の余地がありそうだった。これは、かなりキビシイ。

と思っていたのだが、そのあと、3回行った。2回目は、近いから、たまにはのぞいて見ようていどの気分だったのだが、メニューがかなり充実していて、おどろいた。そして、3回目と4回目は、妻と行った。つまり、それぐらい安定感が増していた。子供は少し話せるようになり、あいかわらず店にいたが、以前より手間がかからなくなっていた。

ところが、このあいだ、前を通ったら看板がなくなって閉まっていた。やはりダメだったかと思ったが、簡単には潰れそうにない感じだったので、念のためネットで調べたら、なんと、東大宮の1等地とまではいかないが、1.5等地、駅近くのBクラスぐらいの立地に移転していたのだ。

この店では、若い子持ちの外国人夫妻ということもあり、いろいろ感じることがあったし、考えさせられることもあった。

まちの面白さは、このC-Dクラスのチャレンジャーがいてこそかもしれない。東大宮ぐらいの規模のまちは、それを体験的に感じやすい。

チャレンジにもいろいろある。C-Dクラスから上位をめざすものもあれば、上位は目指すことなくC-Dクラスを維持するのも、それなりの難しさがあり楽しさがある。マーケティングの専門家やグルメなコンテンツや評論家ライターたちがなんといおうが、また別の尺度の面白さが存在する。

まちは、そうして生きているのだ。

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