『dancyu』1月号、特集「いい店って、なんだ?」に、歌舞伎町のつるかめ食堂を書いた。
年末はあわただしい。先週、ひさしぶりに風邪の症状が出たが休んでいられず、そのうえ、5日7日8日10日と東京へ行かなくてはならないスケジュールで、浅田飴なめなめ酒を飲み飲み強行突破していたら風邪は引っ込んでしまった。
この間いろいろなものが届き、いろいろな人に会って、いろいろおもしろいことがあったけど、とりあえず、この告知。
12月6日発売の『dancyu』は「創刊25周年記念特別号」で、特集は「いい店って、なんだ?」。
「なんだ?」というのは、問いかけなのか、それとも…。SEALDsがデモで「民主主義ってなんだ」を掲げ、本のタイトルにまでなったが、「なんだ?」というのは、つねに考えていなくてはならないことだけど、扱い方によっては、たちの悪いことになる。
大扉のページには、「dancyuに縁のある書き手52人に/お気に入りの店を一軒だけ揚げて/自分にとっての「いい店とはなにか」を語ってもらいました」とある。
「なんだ?」に対して「とはなにか」と。このあたりがクセモノになりかねない。
おれはそう思いながら、歌舞伎町のつるかめ食堂を書いた。「自分にとっての「いい店」」については書きながら、「とはなにか」については避けたりアイマイにして、「なんだ?」のクセモノの面に対処した。
ま、読んでいただくしかない。
書き手52人で、写真も52人。食べ物は写真だ。実際に、いつも写真スペースが大きく、文の文字量が少なくて悩ましいのに、書き手ばかりクローズアップされている。表紙も写真ではない。だけど、写真が、すごい。今回は、とくに。もくじに、ライターの名前だけじゃなく、写真家の名前も入れてほしかった。
どんな人たちが、どんな店を「いい店」にあげたか、もくじをご覧ください。
http://www.president.co.jp/dan/new/index/
で、歌舞伎町のつるかめ食堂の写真は、『雲のうえ』5号食堂特集と22号うどん特集などで一緒に仕事をした、齋藤圭吾さん。もう、バッチリ。おかず一皿の一枚写真に、猥雑で雑多な歌舞伎町のエネルギーや空気まで撮った感じ。この撮影の日は、終わってからよく飲んだ。
ところで、おれのプロフィールについては、編集さんが書いてくれたのだが、こんなふうになっている。
「著述家。1943年生まれ。「大衆食堂の詩人」「酒飲み妖怪」の異名を取り、"庶民の快食"を追求。著書は『大衆めし 激動の戦後史』などいろいろ。2011年2月号の「みんなの『味噌汁ぶっかけめし』で鮮烈の初登場を果たす。」
「著述家」と書かれたのは初めてだ。校正で気が付き、いつものように「フリーライター」にしてもらおうかと思ったが、プロフィールについては編集さんにまかせ口をはさまないことにしているので、そのままにした。こういう「肩書」は、おれにとってはアイデンティティに抵触するようなことではないからどうでもよく、編集サイドにおまかせなのだ。
「2011年2月号の「みんなの『味噌汁ぶっかけめしで鮮烈の初登場」には、おおそうかと思いだした。あのときは、『汁かけめし快食學』を読んだという編集さんから突然メールをいただいたのだった。おれのばあい出版社や編集部などに対して営業的な接触はやってないし、まったくつながりはないので、いつも、突然メールをいただいて始まる。
このとき、もしテーマが『味噌汁ぶっかけめし』でなかったら、引き受けたかどうか。
それで縁はできたが、とくに積極的に売り込むでなく、声をかけられたら有難くやらせていただいている。いつもグルメな書き方はしてないのだが、数えたら、いつのまにかけっこう仕事をさせてもらっている。そのうちザ大衆食のサイトにまとめてみようかと思っている。思っているだけだが。
『dancyu』に書いていると、ときどき、すごいライターのように思われることがあるが、あまりうれしいことではない。「書く」という仕事は、書いた出版社や雑誌によって、評価されるものではないだろう。
だけど、とかく、世間は、ある種のランク付けというかグレード付けというのか、それに知名度もまざり、「いい出版社」「いい雑誌」をはかりにかけ、どこのどんな雑誌に書いているかでライターをはかりにかける。業界内ですらそういうことがある。
そのていどの文化度では、「いい文化」は育たないね。
本誌の最後のほうに、「編集部から」というのがあって、江部編集長が書いている。今回のこれが、すごくおもしろいのだが、その件はあらためて。
とにかく、猥雑で雑多な歌舞伎町も、変転激しい歌舞伎町で堂々の営業を続け60年になるつるかめ食堂も、いい!
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2015/09/19
東京新聞「大衆食堂ランチ」35回目、新宿・つるかめ食堂歌舞伎町店。
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