東京新聞「大衆食堂ランチ」38回目、方南町 やしろ食堂。
毎月第三金曜日に東京新聞に連載の「エンテツさんの大衆食堂ランチ」は、去る18日の掲載だった。
今回は方南町のやしろ食堂、すでに東京新聞Webサイトでご覧いただける。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyoguide/gourmet/lunch/CK2015121802000203.html
東京の古い大衆食堂のチェーン店というかグループは、いくつかあって、いまでも勢力のあるのは、東京の東側を中心とするときわ食堂だが、かつて西側にはやしろ食堂が大きな勢力を持っていた。
このほかに「ヤマニ」の商号の食堂もあったが、いまでは居酒屋として何軒か残っている以外、ほとんど姿を見なくなった。
やしろ食堂もかなり数を減らしているが、それぞれの土地に根付いて残っている店がある。
このやしろ食堂が「定食ヤシロ」の暖簾を下げるようになったのは、もう20年以上前になるか。「カタカナ化」する時代の動きへの対応だったのかもしれない。
この連載が始まってから、新高円寺にあったやしろ食堂を紹介しようと思って、掲載のひと月ほど前に撮影をすませ原稿を作成した。ところが、校正の段階で確認の電話を入れて、閉店したことがわかった。にぎわっていた食堂なのでおどろいた。
まわりからみると、突然の閉店だけど、前回のキッチン・タイガーでも書いたが、店主が高齢化している食堂では、いつまで続けるか、いつやめようか思案しなからの日常でもある。
とにかく、今回は、やしろ食堂を無事に載せることができた。
そこに、「この店は東京メトロ方南町駅近くの方南中央通り、方南銀座通り商店街にある。八百屋と鮮魚店と大衆食堂がある町はいい町とかねて思っているが、実際のところそういう町は激減した。ところが、この商店街には、揃(そろ)っているのだ。ほかにパン屋も文房具屋も本屋も、昔の商店街の顔が残っている」と書いた。
「にぎわっている」といえるほどの商店街ではないが、こういう商店街があって、そこに大衆食堂もあるというのは、うれしい。
しかも、このやしろ食堂の店頭が、いろいろにぎやか、「がんばっている」という感じで、エールを送りたくなる。
このにぎやかなメニューは、店内にまで続いていて、大衆食堂らしい雰囲気を出している。20名ちょっとほどの規模で、すごい豊富なメニュー。「食べるぞ~」という気分が盛り上がる。
あらためて、こういうメニューの数々を見ると、人間の欲望の気配を感じ、とても愉快な気分になる。メニューは、「生きる」人間の「生きる」欲望のあらわれなのだ。大衆食堂は、それを「品よく」あるいは「都市的に」コントロールすることなく、自然に解き放つ。日除けテントの「ボリュームたっぷり」も、そういう大衆食堂の気分だ。
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