発売中の『dancyu』2月号ラーメン特集に書きました。
おれがラーメン特集になんて似合わない、というひともいるけど、ま、適材適所ってことか、それはここに載せる店の写真からでも、わかってもらえるかもしれない。
おれが取材と文を担当したのは、笹塚の10号坂にある「福寿」であり、1980年代後半からのB級グルメのラーメンブーム以来の、姦しい「ラーメン道」「職人道」といったものを極めるラーメンではなく、昔の大衆食然としたラーメンでありラーメン店なのだ。
そして、「そこにずっと昔からある。」というコーナーに、ほかの数店と共に収まっている。
正確には「中華そば」だろう。。福寿の中華そばを食べてみると、やっぱり料理としては、「ラーメン」と「中華そば」は別モノではないかと思いたくなるほどだ。おそらく、いまどきのラーメンしかしらないひとは、「ちょっとちがう」と思うのではないか。実際、ここのラーメン、じゃない、中華そばを食べ、ラーメンとの違和感を持ったひとがいた。「まずい」というひともいる。
だけど、おれからすると、これが、まさに中華そばでありラーメンなのだ。ラーメンというと、蕎麦屋か大衆食堂のラーメンがほとんどだった時代、つまり札幌ラーメンの席捲以前に関東で大勢を占めていた中華そばであるところのラーメンなのだ。
しかも、創業の先代が蕎麦屋からの転身ということもあるのだろう、麺や汁の感触から「日本蕎麦」の感じが伝わってくる。「質実剛健」を感じる味わい。
こういう話は、誌面には少ししか書いてない。もっと心動かされることがあったので、それを中心に書いた。
店主はおれより2歳上の74歳。おれは店主に、「あんたそのトシでよくやっているねえ、うちに取材に来る人たちは、もっと若いよ」といわれ、おれはドキッとしたのだが、このトシになると、店に立つ店主も大変だ。
そして、店主は、アタリマエのことだけど、あまり耳にすることがなくなった、いかにも街に生きる「大衆店」のあるじらしいことを言った。その言葉に打たれた。それを、「ラーメンは芸術」より崇高な精神としてまとめた。
写真は、キッチンミノルさん。いつも『dancyu』の誌面で、アバンギャルドなタッチというか、少しほかの料理写真などとはちがう雰囲気の写真を見せてくれている方だ。
いつもは写真とレイアウトが決まってから書くのだが、今回は年末スケジュールで写真もレイアウトも決まらないうちに書きあげた。できあがったのを見たら、写真と文が、なかなかうまくコラボしている。このへんは、編集さんのウデだろう。
「昭和のまま朽ち果てようという強い意志を感じる」と書いた福寿の佇まい。
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