2016/01/28「〈乙女マトリックス〉と、気になる中間層の崩壊。」で、中間層のことにふれたが、これは年収から見た中間層のことで、川の東京学にも関係する基礎データなので、主な数字をひろってみた。
こういうデータを調べるについても、インターネットが便利になって、総務省などのデータから計算し加工しなくても、見やすく整理されたデータを提供している、いくつかのサイトがある。
ここでは、2014年総務省発表のデータをもとにした、「年収ガイド」http://www.nenshuu.net/のサイトを利用させてもらう。データの整理がいくつもの角度からされていて、基礎データも豊富、サイトもみやすい。
まず「年収ガイド>都道府県別 年収データ一覧>全国市区町村 所得(年収)ランキング」のところに、このような説明がある。以下は、いずれも、平均年収の数字だ。
「平成26年総務省発表の資料より全国1741市区町村の所得を算出しました。/トップは例年1位の「東京都港区」/平均所得1266万7019円という桁違いの金額で2位千代田区に300万円以上の大差をつけ、今年も1位を堅守しています。/六本木ヒルズや青山、赤坂、麻布などハイステータスな人材しか居住することの許されない土地柄がこのような結果を生み出しています。/また、10位までに東京都区部が7区ランクインしており、首都東京の経済的な強さが表われるデータとなりました。4位は兵庫県にある関西の富裕層が居住する芦屋市で、関西圏では唯一のトップテンランクイン。/5位の猿払村はホタテ漁の好調さが所得を押し上げたようです。」
そのトップテンは、こういうぐあい。
1位…港区(東京都)…1,266万7019円。。2位…千代田区(東京都)…898万8291円。。3位…渋谷区(東京都)…756万5684円。。4位…芦屋市(兵庫県)631万7423円。。5位…猿払村(北海道)626万5300円。。6位…目黒区(東京都)…615万8887円。。7位…中央区(東京都)…593万1226円。。8位…文京区(東京都)…580万7646円。。9位…世田谷区(東京都)…536万4445円。。10位…軽井沢町(長野県)…513万7764円。
つぎに「年収ガイド>都道府県別 年収データ一覧>都道府県別年収ランキング> 東京都」を見る。すると、総務省発表データとはちがう、「厚生労働省発表の「賃金構造基本統計調査」をもとに、東京都の年収状況を算出」して、「平成26年の東京都の平均年収は612万6000円でした」とある。この数字は、ほかのデータと比べると高すぎる感じがする。ほかのデータでは、東京都の平均は400数十万円、450万円ぐらいという話もある。
とにかく、「年収ガイド>都道府県別 年収データ一覧>市区町村 所得(年収)ランキング>東京都 所得(年収)ランキング」を見る。これを見ても、「東京都の平均年収は612万6000円」というのは、4位の目黒区…615万8887円に近い数字で、22位以下62位まで4000万円未満がズラリ並んでいるから、この数字は何かに偏っている可能性がある。調べればわかることだが、いまはメンドウなので省略。
ここで、東京都の区市町村別の平均年収から、区だけを、順位にしたがって、ひろってみよう。
1位、港区…1,266万7019円。。2位、千代田区…898万8291円。。3位、渋谷区…756万5684円。。4位、目黒区…615万8887円。。5位、中央区…593万1226円。。6位、文京区…580万7646円。。7位、世田谷区…536万4445円。。8位、新宿区…508万3781円。。
10位、品川区…455万1865円。。12位、杉並区…452万5651円。。14位、豊島区…421万2108円。。17位、大田区…413万7140円。。18位、中野区…410万2854円。。19位、練馬区…407万2305円。。20位、江東区…404万5174円。。22位、台東区…394万9763円
32位、墨田区…359万7865円。。33位、板橋区…359万1968円。。35位、荒川区…352万6718円。。38位、北区…351万3765円。。40位、江戸川区…350万531円。。42位、葛飾区…341万7753円。。45位、足立区…330万7146円
隅田川を含む荒川沿いの区は、20位・江東区、22位・台東区、32位・墨田区、33位・板橋区、35位・荒川区、38位・北区、40位・江戸川区、42位・葛飾区、45位・足立区、であり、南部に新興のマンションが林立する埋め立て湾岸開発地域を抱える江東区の平均が400万チョイのほかは、300万円台だ。
川の東京学は、東京低地と台地の格差を問題にしようとするものではなく、低地から、あるいは低地の、東京をみようということなので、とりあえず数字として整理しておくだけだが、それにしても、こうしてみると、ずいぶんきれいな「格差」になっている。
1980年代後半のバブルのころから「階層消費」ということが議論になって、ようするにそのころから所得格差が拡大し、それにしたがって消費も階層化がすすむといわれた。マーケティングの分野でも「セグメンテーション」がいわれ、雑誌などの読者対象を、年齢(=所得)やライフスタイルにしたがって絞るようになったのも、そういう背景がある。
ところで、消費ということになると、個人の年収のデータも大事だが、世帯年収に注目しなくてはならない。そこで、都区内で最下位45位・足立区(330万7146円)の「世帯年収割合」を見た。
300万円未満…………… 37%(35%)
300万円〜500万円………26%(26%)
500万円〜700万円………14%(15%)
700万円〜1000万円………9%(10%)
1000万円以上…………… 4%(6%)
世帯総数 326,480世帯(人口683,426人)
()内は、全国平均だ。全国平均に近い階層構造だが、300万円未満が全国平均より多く、300万円〜500万円が全国平均と同じだ。500万年以下が63%を占める。ついでに、42位・葛飾区(341万7753円)の場合は、どうか。全国平均に近い構造をしている。
300万円未満…………… 34%(35%)
300万円〜500万円………25%(26%)
500万円〜700万円………16%(15%)
700万円〜1000万円…… 11%(10%)
1000万円以上…………… 6%(6%)
世帯総数 198,420世帯(人口442,586人)
東京都の平均年収が450万ぐらいだとすると、それに近い12位・杉並区(452万5651円)の場合も見てみた。
300万円未満…………… 30%(35%)
300万円〜500万円………25%(26%)
500万円〜700万円………13%(15%)
700万円〜1000万円…… 11%(10%)
1000万円以上……………10%(6%)
世帯総数 303,800世帯(人口549,569人)
都区部で最も人口が多く、豊かな居住者が多そうなイメージの7位・世田谷区(580万7646円)が気になる。
300万円未満…………… 21%(35%)
300万円〜500万円………21%(26%)
500万円〜700万円………12%(15%)
700万円〜1000万円…… 11%(10%)
1000万円以上……………13%(6%)
世帯総数 451,770世帯(人口877,138人)
と、まあ、こんなぐあいなのだ。年収で300万円台だと可処分所得は200万円台になる場合が多いし、実家住まいでもなければ、かなり厳しく、不安も大きく、消費性向は委縮せざるを得ない。
「消費者心理」や「消費性向」とかいわれるものがあって、こういう数字だけでは、中間層の動向を判断できない。だけど、かなり、こういう数字の範囲にしばられる傾向が出てきているのも、たしかのようだ。30歳前後から下の年齢ほど、その傾向が顕著のような感じがする。
とくに30代後半から上は、バブル崩壊後を経験していても、高度成長からバブル期を体験した家族や社会の資産的文化的影響や恩恵を少なからず受けていて、けっこう高度成長期の感覚や思考を引きずっている。
それはともかく、この数字に、総務省の家計調査をクロスさせていくなら、もっといろいろなことが見えてくるだろう。主に飲食関係を、少しずつ進めてみたい。
それにしても、総務省家計調査が発表になると、浜松と宇都宮が餃子でどうのこうのが話題になる。そんなふうにしか利用されない家計調査も、そんなふうに話題にされる餃子の消費もまちも、アワレというしかない。こういうデータは、もっと自分たち自身を知るために、活用したいものだ。
飲食の消費でトップを争うなんて、いまや「まちおこし」や「まちづくり」にまで利用されているようだが、その先に、どんな未来があるのだろう。
最後に、ここにあげたデータは、転記まちがいがあるかもしれないので、利用するときは元データにあたってください。