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2016/05/10

『CULTURE Bros(カルチャーブロス)』は、すごく面白い。

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『CULTURE Bros』は、東京ニュース通信社が発行するムック、『TV Bros』の「特別編集」版ってことだ。昨年11月に1号が発行、好評につき、3月に2号が発行になった。どうやら隔月発行になるらしい。

1号は買ったが、2号は若き編集長の前田和彦さんから送られてきた。どうもありがとうございます。

このマガジン、おれのような老眼のジジイは読者対象でないらしく、本文の文字が小さい。読むのに疲れるが、それでも読んでしまう面白さ。でも、だいぶ前にいただいたのに、読み切るのに時間がかかったのは、文字が小さいせいだ。

1号は、「松井玲奈/又吉直樹/マンガ特集」がメイン。2号は、「おそ松さん/ラジオ特集/SKE48」がメイン。まったくおれに縁がなさそうなのだが、内容は、そうではない。

サブカルチャー惷動台頭期を見てきたジジイとしては、「サブカルチャー」が「サブカル」へと変質するにしたがい失われてきた、カウンターの精神、ロックな精神に、ひさしぶりにふれた感じがある。とうぜん、当時のまんまということではないが。

それが刺激的で、小さい文字を拾うようにして読んだ。

メイン以外のコラムも面白いし、それから磯部涼×九龍ジョーの「カルチャー時評」が、とにかく面白い。

2号のカルチャー時評は、「『今の時代』ってなんなのか?」というテーマで、さまざまな話題を掘り下げているが、「近年のエンターテイメントに関して思うのは、社会問題をストレートに扱う作品が増えたっていうこと」(磯部)をほじくり返していて、まさに「今の時代」が浮き彫り。

「若者の恋愛を描こうと思ったら、労働環境を含む下部構造に触れないわけにはいかないっていうのもあるよね。ちょっといいレストランでのディナー一つ取ったって、そんな簡単にできることじゃなかったりするんだから」(九龍)

エンタメの話題から賃労働をベースにした社会の崩壊にまで触れているのだけど、ブラックや格差の問題にせよ、下部構造のガタガタは、エンターテイメントな食までゆさぶっている。

コラムのドラマの項では、成馬零一が、「恥ずかしくなければ、恋愛じゃない、ダサくなければ、ドラマじゃない」のタイトルで書いている。このなかで、「今の表現者が、洗練の名の元に切り捨てている人間の中にある恥ずかしくてダサい部分を、坂元だけが逃げずに描いている」と。

「坂元」とは坂元裕二のことで、この人のドラマについては「カルチャー時評」でも触れているが、とにかく、「今の表現者が、洗練の名の元に切り捨てている人間の中にある恥ずかしくてダサい部分」の問題は、ドラマに限らないだろう。

「洗練」「丁寧」「誠実」「真摯」…といったことで、キレイゴトばかりが並べられ、いろいろなことが切り捨てられてきたのだが、「今の時代」は、揺れ動いている。経済を震源とする大地震続きだ。

そこの矛盾と、どう向き合うかは、表現の大きな課題だろう。というぐあいに、おれのような一介のフリーライターも、大宮のいづみやあたりで20歳そこそこの若者と言葉を交わしながら、考えたりするわけなんだが。

おれがカウンターカルチャーやサブカルチャーなる存在を意識したのは、江原恵の『庖丁文化論』のおかげだ。というのも、この本の一般読者で江原恵のファンには、カウンターカルチャー系の人が多かったからだ。

そして、『庖丁文化論』は1974年だが、70年代後半になって、このカウンターカルチャー系の人たちがサブカルチャーへと動き、このあたりがゴチャゴチャになりながら、「食文化」はサブカルチャーのアイテムになっていった。

当時、食文化に高い関心を示す人たちは、自販機エロ本『JAM』などを手にする人たちも少なくなかった。サブカルチャーは、「エロ」などの当時のアングラカルチャーとも親和性があったのだな。

80年前後から、食文化やサブカルチャーの動きは変化していくのだが、ま、そんなことなども思い出しながら、『CULTURE Bros』を読んで、なんだか面白くなってきたなあと思っている。

そうそう、2号には、「北村早樹子の世界」というインタビュー記事があるけど、「幸せな人間が忘れている、汚い部分を思い出させる運動」は、ヤッホーブラボーだね。

オトナたちのSEALDs批判なんか見当違いが多いし、あと「小商い」ブームみたいなのが一部にあるけど、賃労働をベースにした社会の崩壊が視野に入っていない小商い礼賛も見当違いだし、「福島」や「熊本」をネタにしながらの見当違いも多い。

ようするに、格差の全体像をとらえなかったり、矛盾のどこを見るかで見当違いになる、今は、そういう時代ってことだ。

『CULTURE Bros』を読んで、時代を読み違えないように気をつけよう。

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