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2016/06/10

農水省は食生活に口をはさむよりやることがあるとおもう。

001001『下流老人』(朝日新書)が売れているらしいが、書店には、ほかにも売れているかんじでヤバイ本が並んでいる。 『下流中年』(SB新書)や「社会の監獄に閉じ込められた若者たち」というサブタイトルがついた『貧困世代』(講談社新書)などだ。

若者も中年も老人もヤバイってことは、もうこの国がヤバイってことではないか。このあいだ飲み会でコッカテンプクの話を持ちかけてきた女がいて、おおオモシロイじゃないかおれを都知事にしろとか話をしていたのだが、その話を別のところでしたら、ある男が「いまごろ何いっているんだ、コッカはとっくにテンプクしているよ」と。

おお、そういえば「日本は底がぬけている」ともいわれているしな。ヤバイことだらけだ。

毎月送られてくる農水省の広報誌『aff』5月号も、ヤバイことだらけだった。

この号、6月の食育月間を意識してか、特集1が「食生活」で特集2が「お箸のはなし」。もうほんとヤバイ。

だいたいね、生産を所轄する農水省が、本来の業務である完全にヤバイ、コメ政策など農業改革を抱えているのに、国民の食生活に口をはさむこと自体がヤバイ。

しかし、ヤバイ内容だ。

最初の見開きが、なぜか「日本全国の麺文化をご紹介!」っていう「ニッポン麺探訪」だ。そりゃまあ「江戸時代から愛される庶民の味」ってことなんだろうが、麺市場は輸入の小麦や蕎麦なくして成り立たないんだからなあ。こんな生活や消費の舞台のことより、久松農園やそこの野菜を利用しているレストランみたいなのを取りあげたほうがよいのに。ほんとに何を考えているのか「生産」がアタマにないのか。

そして次の見開きから、もっとヤバイ、「特集1食生活」だ。

ああ、ヤバイ。いきなり「ひとり暮らしが増加」「孤食の高齢者が陥る栄養不良」っていうヤバイ話。

さらに次は、「若者の食生活が危ない!?」ときたもんだ。ヤバイぞ、「欠食女子と過食男子」。

そして、えーいとどめだ、子供がヤバイと「子どもの食生活の問題」ってことで「栄養が十分にとれない子どもたち」。ああ、ヤバイニッポンに生まれてしまったのだからねえ。

農水省の広報誌が老人も若者も子供もヤバイというのだ。

いや、もうこうしてヤバイことを並べ不安をかきたてる以外どうしようもないほどニッポンはヤバイのだろう。

しかし、こうやってみると、いつから農水省は厚労省になったの?健康や栄養問題は厚労省の管轄じゃなかったの?とおもうのだが、それは食育基本法推進所轄が農水省になったからだろう。それにしても、これはないだろう。

それにしても、いったい、農水省のやっていることはなんなのさという疑問に、これで答えになっているのだろうか。そのあたりからしてヤバイ。こんな食生活のことなど、広報誌ではない広報予算でやればいいじゃないか。それとも、こんなアンバイに食生活に口をはさんでいれば、農水産業はなんとかなるという認識なんだろうか。そうだとしたら、こんなにヤバイことはない。

そんな憂いを胸にためながら、つぎのページを開くと、どひゃ~、まだこんなことをやっているなんて、ほんとヤバイよ。これ、農水省の広報誌でやることか。

「食育の取り組み1」で「本物の技と味を知る」ってことで、「料理の達人が『給食』で全国に広げる和食体験」だと。ああ、滅びゆく「和食体験」で、ほんとうに和食はなんとかなるとおもっているのか。ヤバイねえ。

さらに「食育の取り組み2」は「食べ物を自分で作って食べる」ってことで、「30年続く高取保育園の食育の成果」ってのが紹介されている。これ、ヤバイよ、食育の成果なんて、大人になってみなくちゃあね、わからんでしょ。それを成果のように掲げるのは、単なる大人つまり為政者の勝手な期待にすぎないんじゃないの。こういうことで、ずるずるヤバイコンニチを迎えているのに、まだそれを続ける。だいたい、こんな体験できるのは、ほんの一部でしょ。そりゃまあ、やって悪くない話だけど、全国のモデルにしていくようなことなのだろうか。

都会の子が田植えを体験するのもよいけど、それは「ごっこ遊び」のようなもので、産業や生活の根幹じゃないはずだ。そのあたりカンチガイしやすい。

002そりゃそうと、なんで「特集2」が「お箸のはなし」なのだ。ああ、「国産の『割り箸』が健全な森林づくりに役立つ」って、そりゃウソじゃないだろうけど、それで箸の話とはねえ。しかも例によって「和食の伝統」だの「『箸』を正しく持つことは、家族や周囲の人々と気持ちよく食事をすることにつながります」って、気取るんじゃねえっての。

「人前では恥ずかしい『きらい箸』に気をつけて」なんて、けっ、おれは箸の持ち方がフツウとは違うが、それが何か? ああ、それでこんなことを書く男になったのか。

だいたい「かき箸」はいけないというが、めしをかっこむのも、うまさのうちってことがあるよ。そもそも、本誌の最初の見開きの麺のところでも、「お上品に食べるんじゃなくて」という話があるよ。

箸のことは、ことさら「伝統だ」「美だ」というのは、生活というより懐石などのお上品な趣味の世界の話としてはよいけど、その範囲のことだろう。いい趣味を持ちましょうね、ていどのこと。

だいたい森林づくりなら、おれも体験してきたけど、こんな箸のことより大事なことがあるだろうに。ほんとに、ヤバイなあ、こういう話は。

001つぎの見開きが、農林水産大臣賞を受賞のトマト農家の紹介なんだけど、箸のところじゃカラーイラストなどをタップリ使って、なかなかこった誌面なのに、こちらはじつに素っ気ない、じつに事務的。農水省は、生産や生産者のことを、どう考えているのだろうとおもってしまう。

まあ、ほんとヤバイ。

そのヤバイ農水省の次官に奥原正明経営局長が着任することが決まったようだ。そのニュースが流れているが、誰がやってもヤバイことになっているニッポンの農水産業、なんとかなるか。

それはまあ、国民の関心というのも大事だとおもうね。大事だけど、「食」というとグルメだ栄養だと騒ぎ「伝統」をありがたがるだけってことじゃあ、はて、どうなるか。

もし、食べることが生きることなら、食べる話ばかりじゃなく、食べるを支える全体構造や農水産業にも関心を持たないとなあ。いや、ただ「守る」だけのことじゃなく。もう日本は貧乏国なのだから、農水予算のカネの使い方としても。まあ、つまり現在の矛盾を、どういう矛盾に改善するかという視点で。完全無欠の政策なんか成り立たないのだから。食育なんかにカネを使っている場合かね。

ほんとヤバイよ。

農水省の広報誌『aff』5月号は、こちら農水省のサイトでもご覧いただける。
http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/index_1605.html

すでに6月号も発行になっていて「大豆」が特集。こちらはグッとよいとおもう、こういうのがよいとおもうね。5月号はおかしかったということにしておこう。食生活には、あまり口をはさまないほうがよいとおもう。

でも、ニッポンは基本的にヤバイ。縮小貧乏化する社会での広報は、これまでほとんど経験がないわけだから、なかなか難しいね。

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