戦争か、平和か、それ以外に第三の道はないか!
2013年の年末に、小沢信男さんの『捨身なひと』(晶文社」が発行になり、小沢さんが送ってくださって、いただいた。そのことはこのブログに書いたとおもうが、読後の感想などは書いてない。こんなにおもしろい本は近年マレだ、詳しく紹介したいなとおもいながら、日にちがすぎた。なので今日こそ。
というわけではない。
この本は、「一をもって貫く 花田清輝」「世のひとびとと天皇と 中野重治」「一寸さきは光 長谷川四郎」「死者と生者と 菅原克己」「満月や大人になっても 辻征夫」というぐあいに、小沢さんと親交があった(それもただならぬものだった)、「捨身で立ち向かう」5人の方々のことを、小沢さんがかつて書いたり話したりしたことを中心にまとめている。
小沢さんでなければできない仕事。帯に「かくもチャーミングな男たちの心意気!」とあるが、小沢さんも捨身な心意気のひとであり、もう彼らの鼓動がビンビン伝わってくるのだが。そのことについては省略。
とにかく、小沢さんも含め、なんと痛快で傑作な人たち。いまでもロクデモナイ時代だが、もっとロクデモナイ戦中戦後を、このように生きた人たちがいること、その「捨身な」生き方は、真似しようにもできないだろうけど、この本を読んでツメの垢ぐらいは身につけたい。知らなかった辻征夫の本も何冊か買って読んだ。いまのロクデモナイ時代を、どう捨身に生き抜くか。
それで本題。
要約すれば「戦争か、平和か、それ以外に第三の道はないか!」ということになるこれは花田清輝の著述にあるらしい。このひとは、ややこしいひとだ。「右翼」とみられたり「左翼」とみられたり、ようするにそういう単純化が無理なのだ。そういう器にひとをはめこんでみようとするのも、いい加減にしたほうがよい。要は、「右」か「左」かではないのだから。
花田清輝の書いていることも、おれのように知識貧弱なものにとってはややこしく、彼の主著は、何度も手にしてはいつも最後まで読めず挫折している。
が、しかし、小沢さんが、ここのところをうまいぐあいに引用して書いてくださっている。
「戦争か、平和か」といえば、平和がよいに決まっている。まさに二元論の二者択一。だけど、戦争は泥棒であり、平和は乞食、なのだ。戦争か平和か、は、泥棒するか乞食するか、ってこと。
そこで、「ああ! しかし、それ以外に、第三の道はないか! 第三の道はないか!」と、花田清輝は「泥棒論語」で呼びかけているのだそうだ。
なかなかおもしろい呼びかけだ。そもそも「呼びかけ」だということに意味があると小沢さんは書いている。
そうして、おれは考えていた。考えているうちに、ひらめくことがいくつかあった。
抽象的に考えても、浮かぶものはない。何を例に考えていたかというと、これからの大衆食堂だ。自分がやるとしたら、どんな食堂にするか。まんざら空想のことではなく、前から、やどやで食堂経営の話は出ている。このあいだも、その話になった。
やるとなれば、戦争でもなく平和でもない、コレだね。という構想が浮かんでは消えしていたのだが、かなりクッキリしてきた。あとは、数字と合わせれば、ほぼ骨格ができあがりそうだが、数字とあわせるのが、なかなか大変。
それで、ちかごろ、北浦和の「キムラヤ」を見てさらに気になっているのが、「昭和モダニズム」「ハイカラ」というやつなのだ。「和洋折衷」といわれることも多いのだが、これって、もしかしたら、戦争と平和の折衷か。「戦平折衷」なーんて。
ようするに、どんなプランも完璧つまり矛盾のないものはない。もし矛盾がないなら、自分が気がついていないだけで、プランが詰められていない、現状把握が不十分なのだ。
プランは、いまある矛盾を解消するのではなく、別の矛盾に組み替えて、現状を変えること。そこに売上と利益を計画する。
これでも、乞食の道であるとはいえ、戦争か平和かよりは第三の道になる。ジリ貧にならず、創造的な可能性がふくらむ。
ってことで、ちかごろ、昭和モダニズムがただよう景色がやたら気になっている。
「和洋折衷」も見直す必要がありそう。というか、あらためてみると、いろいろな可能性を秘めていて、おもしろい。大宮のいづみやも、とても参考になる。ま、たいがいのことが、「昭和モダニズム」をくぐりぬけてきているのだからなあ。
アタマのなかで構想している食堂は、大雑把に書くと、客席数6人を最小ユニットというかモジュールというかにして、12人規模で採算ライン、ワンプレートの食事を中心にしたメニュー。店内のデザインは、近年リニューアルした大衆食堂に多い「和風モダン」は採用しない。なんと、検索していたら、イメージしていたのに近いものが、フランスの大衆食堂の画像にあった。すごい時代だなあ。
などと、あらぬことを考えている。とても楽しくて、仕事がすすまない。
ああ、40代だったら、さっさとカネを集めて、やってみるのになあ。ナニゴトもトシを考えなくてはいけないのが、条件としてはマイナスだ。
それもまた矛盾。矛盾を、どう引き継ぎながら展開していくかなのだ。
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2016/05/26
東京新聞「大衆食堂ランチ」43回目、北浦和 キムラヤ。
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