ぴあMOOK『東京大衆食堂100』で巻頭インタビューと「進化」。
10月初め、きのう書いた『dancyu』11月号が出たころ、ぴあムック『東京大衆食堂100』が発売になった。これ、いま奥付を確かめたら、発行日は今月30日になっている。このへんの仕組みは、出版業界に疎いおれには、よくわからない。
とにかく、『東京大衆食堂100』の巻頭インタビューに登場している(巻頭インタビューに応じただけで、企画編集取材には関係してない)。
発行は「ぴあ」だけど、編集は「下請け」といわれる編集プロダクションで、その会社から連絡があって、登場することになった。社長さんやら担当の編集さんやらから、いろいろメールがあり、どれもしっかりしたやりとりにならず、なんだかドタバタな様子で、大丈夫かな~と思いながら、ま、そのへんが「編プロ」のおもしろさだろうと思いながら付き合っていた。
しかし、インタビューの場には、それまでメールでやりとりがあった人たちとはちがう女性があらわれて、この人がインタビューをまとめたのだけど、インタビューの最中から食いついてくるところが、おれ的にはツボで、これは期待できそうという感じだった。
インタビューと撮影は、三鷹のいしはら食堂で行われた。そこからの帰りの電車で、彼女は錦糸町生まれ育ちと知った。それでちょっと納得のいく点があった。
実際の仕上がりは、おれも途中で原稿チェックはしているけど、文章は少々あらっぽいながらも、基本的にはうれしいセンでまとまった。
扉の見出しにある「大衆食堂に批判はご法度」の文言が、ちょっとキツイなあと思い考えたが、おれは編集さんがつけた見出しには口をはさまない主義でもあり、けっきょくそのままにした。そこに、彼女の「熱」を感じたからだ。
それは、本文中の見出し「大衆食堂は”おもしろい”の宝庫」「味の傾向を知る基準になる料理を見つけておくと便利」の内容につながるところなのだが、このあたりの話はかなりカットされて、「ぴあ的」に都合のよい消費的な興味の対象になるところがチョイスされるのをカクゴしていたのだが、違っていた。先入観は、いかんね。
って書いても、読んでない人には、わかりませんね。
ところで、ここから、昨日の話と関連する。
このムックには、昨日の菱田屋も登場しているのだが、その見出しには、こうある。
伝統を守りつつ
新たな風が吹き込まれ
進化し続ける
このように「進化」という言葉が使われている。こういう例は、けっこう多いと思うのだが、たぶん「伝統」に対して「新しい」が継続している状態をあらわしているのだろう。
おれはインタビューで「テッパン大衆食堂の見つけ方」を話しながら、オススメの食堂を3店あげて欲しいといわれ、そのようにしている。
編集全体としては、売り上げが大事だから都心のターミナル駅などを中心にした店のセレクトになるので、おれは都心からはずれた場所で選んだ。
そのうちの一店が、野方の野方食堂だ。
そこでおれは「野方食堂は古い食堂なんだけど、代替わりして建物も新しくなった。でも実に見事に歴史を継ぎながら、新しくなっているんですよ。家族経営の雰囲気も残しているけど、昔のままでもなく、かといって個性のないチェーン店でもない。新しいスタイルの食堂の可能性を感じさせる」と話している。
これも、「歴史」に対して「新しい」であり、「進化」といえる。
だけど、この2店は、方向性が違う。それは、内装にも表れているのだけど、場所や経営や人の条件など「歴史」の継続は負荷でもあるから、人間がシステムを動かしているようでいながら、システムに従いながら変化しているのと同じ状況があらわれる。
ようするに、あるのは「変化する環境への適応」であり、それを「進化」と見るかどうかは、「見方」のことなのだ。だけど、とかく、とくに科学や技術や技能のことになると、「進化」は客観的に存在し「善」であるかのようなことになりやすい。その反対は、もちろん、「退化」だ。
だけど、ほんとうに、そうなのか。それは、「進化」の現代病と思われなくもない。
と思っていたら、ちょうどきのう、ツイッターで、こういうのを見つけた。とてもおもしろい。
「退化」は進化の一環、新たな力を得た動物たち
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/101100383/?n_cid=nbpnng_twed
「進化」って、なんだ。一義的には、「新しい」かどうか「進化」かどうかではなく、環境への適応じゃないのか。「退化」は、必ずしも「悪」ではない。
「新しい」「進化」だと評価され注目されながら、消えていったものは、いくらでもあるような気がする。消えれば、忘れられる。ようするに昨今の「人間社会」では、市場性や売り上げしだいで「進化」が評価されるということか。
と、退化する野暮は考えているのだった。
上、野方食堂。下、菱田屋。
| 固定リンク | 0