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2017/01/23

『栄養と料理』2月号に四月と十月文庫『理解フノー』が。

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四月と十月文庫『理解フノー』は、雑誌などの新刊紹介や書評には載ることはない、そう確信していた。ところが、いま発売中の『栄養と料理』2月号の、「本を読む楽しみ」という「Book」のページに載ったのですよ。

短い紹介だけど、生活の雑誌である『栄養と料理』に載ったというのが、うれしい、ありがたい。食がテーマの本ではなかったので、紹介文を見て、、おおそうか、『栄養と料理」で紹介されてもよいのだな、と、なっとくした。

「「大衆食堂の詩人・エンテツ」こと遠藤哲夫さんが、世相、故郷、家族、老いなどについて軽妙に綴ったエッセイ集」と書かれているのに続いて、「気どった話、高尚ぶった話より、日々の生活の満足や幸福をたいせつにする著者の生き方の哲学にしみじみ共感」と。

「気どった話、高尚ぶった話より、日々の生活の満足や幸福をたいせつにする」って、『栄養と料理』の姿でもあるではないか。それに、栄養も料理も、世相や故郷や家族や老いと密接に関わっている。

というわけで、もとはといえば、昨年、『栄養と料理』10月号の特集「お酒好きのための健康術」に寄稿させてもらった縁があってのことだろうけど、『理解フノー』は響きあうところがあったにちがいないと、勝手になっとくすることにした。

紹介してもらったからヨイショしようというのではなく、以前ここに書いたが、いま『栄養と料理』は、かなりおもしろい刺激的な雑誌の一つだと思う。とくに、なんてのかなあ、ダイナミズムを感じる。

最近は、全体的にダイナミズム栄養分が不足しているね。上等そうに、賢そうに、おさまりかえっている。ま、人様のことはいいや。

『栄養と料理』というと、栄養学や家政学を背骨に、いかめしい生真面目さや純粋さをもって、とてもかたくるしいイメージがあった。いや、イメージだけじゃなく、頑固な「良妻賢母」が籠城するところという感じを経験することが、実際にあった。ま、おれの場合だけどね。かつて、おれは栄養学や家政学のばあさんたちが嫌いだった。

それもあって、いまの『栄養と料理』にダイナミズムを感じるということがあるかもしれない。でも、なかなかイノベーションな一冊にはちがいない。

今月号もおもしろい。とくに、雑多な連載がおもしろいってのが、いい。

新しい連載。3人の子育て真っ最中の「ぶたやまかあさんの お台所サイエンス」が、いまどきのハヤリ、ツイッターともリンクして展開するぶっちぎりのおもしろさ。ぶたやまかあさんとは一度飲んだことがあるけど、会ったことがない人でも、ツイッターだけでも愉快でアクティブなかあさんだということがわかる、その人間的な魅力とサイエンスの知識が、そのまま誌面になっている。サイエンスする手仕事としての料理がたのしくなるね。

もう一つ新しい連載。「妻の言い分、夫の言い分」っての、タイトルからして惹かれる。「意外と見えない相手の気持ち 夫婦にありがちな、ささいな誤解や不満、すれ違い。これってうちだけ? いえいえ、たぶんそんなことはないはずです。心理学の研究データから見える夫婦の実際に迫ります」と。いやあ、これは、昔のいかめしく説教くさいばあさんたちの家政学からは出ない企画じゃないのかね。伊藤裕子・文京学院大学大学院人間学研究科教授が執筆している。家政学も、1980年代あたりから変わってきて、科学的な方向を向いているのさ。

まだおもしろい新しい連載があるぞ。かつて、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの仕事を請け負っていたおれとしては、おもしろくてたまらん。「うまいものを探せ! スーパー&コンビニ CHECK」だ。今号は「メンマ編」で「繊維質な気むずかし屋」と。スーパー&コンビニと商品に対しては、大量生産蔑視で手づくり礼賛主義の「正しい」人たちのあいだで相変わらず偏見が強いが、どんどん「進化」しているのさ。しかし、昔は、スーパーでおかずを調達するなんてとんでもないという説教家政学のばあさんたちがいたものだけど…おっと、またばあさんを出してしまった。このあいだ、どこかの会社の単身赴任男性が、「一年以上ほぼ毎日コンビニですましているけど、けっこううまいし健康的にも問題ない」といっていた話しを聞いたが、そういう時代の流れをキャッチしている企画だね。

こうして書いていると、どんどん長くなってしまうが、最後にひとつ。前からの連載で、サンキュータツオの「このコトバ国語辞典に聞いてみよう」ってのがある。今回のコトバは「グルメ(名)」。毎回、一語を選んで、さまざまな辞書をひっくりかえしながら、その解釈や概念をほじくりかえす。なかなか知的刺激にもなる。今回は最後に「言葉は淘汰されます。似た意味でも美食、食通、グルメという言葉が残っているなら、それぞれに存在意義がないと生き残れません。三省堂の「グルメ」は、そんな存在意義を教えてくれる項目でもありました」と、深いまとめをしている。飲食をネタにしているライターさんたちは、読んでおいたほうがよいと思うね。

まだ最後にならない、「食べる政治学」がある。今回のタイトルは、「トランプ大統領でTPPはどうなる?」だぞ。まだあるがやめよう。『栄養と料理』だからできる「レシピの変遷シリーズ」の今号は「ハンバーグステーキ」だけど、これを読んでから、そもそも戦前の「家庭の主婦」が料理本や雑誌などのレシピを見ながら料理をするのはいつごろからどう広まったのか気になり、手近な資料で調べてみた。そのことはまたの機会に。

いやあ、続々と、おもしろい。これが一冊700円だからね。

生活の場から、いまとこれからを、総合的科学的に考える、しかも、いかめしくなく気取りもせず高尚ぶったりせず、見出しに圧倒的に使われている丸ゴチ書体のように偉そうにしてない雑誌。男も読んだほうがいいよ。

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2016/09/13
『栄養と料理』10月号の特集に初寄稿。
2016/06/15
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