『dancyu』のたまごと『栄養と料理』のたまご。
2016/09/13「『栄養と料理』10月号の特集に初寄稿。」に、こう書いた。
「『dancyu』と『栄養と料理』は、じつは、背中合わせで一つの食の姿になる。それでも「食」の全体像からは遠いと思うが。ところが、割りとどちらからしか見てないことが多い。」
この両方の雑誌を読んでいる方がどれぐらいいるかわからないが、今回、というのは今月発売の『dancyu』4月号と『栄養と料理』4月号を見ると、『dancyu』の特集がたまご料理で、『栄養と料理』のこの春から始まった新連載の4回目「ぶたやまかあさんのお台所サイエンス」のお題が「卵ってなぜかたまるの?」なのだ。
たまたまこうなったのだろうけど、同じテーマで『dancyu』と『栄養と料理』がコラボしてみたらおもしろいのではないかと思っていたおれにとっては、この偶然はうれしかった。
しかも、『dancyu』は「380個を食べ比べて検証します!」という「味玉大実験」が大きく扱われ、ぶたやまかあさんの話題はゆで卵を題材にしているというぐあいだ。
衣食住のなかでも、食は、外界のものを体内に取り入れるという際立った特徴を持っているわけだけど、その取り入れ方や考え方については、ずいぶんさまざまなアプローチがあるわけで、その両端をこれで見た思いがして、人間が食べるって、いろいろ大変なことでありますなあ、と、他人事のように、あらためて食と料理のおもしろさと人間の理解フノーについて考えることが多かった。
どちらも、突っ込みが少しマニアックすぎないかという感じもあったが、またそこまでやるのがイマドキの「食の知」なのだということも、思い知った。
『dancyu』は「食はエンターテイメント」を謳い、『栄養と料理』は、とくに謳ってないが、カタクいえば「食はサイエンス」といったところか。しかし、エンターテイメントとサイエンスは、必ずしも矛盾あるいは二者択一の関係ではない。そこが、おもしろいわけだ。
今回の「たまごをゆでる」にあたり、『dancyu』は実際に作りながら体験的実証的な実験を繰り返し、ぶたやまかあさんは料理の科学でも最もコアといってよい化学、白身と黄身という異なるたんぱく質に熱を加えたばあいの変化のちがいについて、滋賀医科大学助教で医学博士の旦部幸博さんに質問し深めている。
これを読んで、おれは「なるほど」と思いながら、いつも朝食用につくるゆでたまごをつくりながら、でも、おれはハードボイルドが好きだから、気楽だね。人生、気楽がイチバン。ってぐあいに、料理や味覚には、科学や技術だけではなく人生観(嗜好や世界観なども含め)が深く関係するねと思った。
そして、かりに『dancyu』と『栄養と料理』がコラボしたばあい、どんなテーマが成り立つか、それは一冊の本のテーマにもなるのではないかと、ああだこうだ考えているのだった。
これは「グルメ」と「クッキング」のあいだ、ともいえるかもしれない。
ところで、この『栄養と料理』4月号には、その『dancyu』編集長の江部拓弥さんが、「食の仕事人」に登場しインタビューの答えている。これがまた、なかなかおもしろい。見出しをあげると「グルメにはグルメの雑誌は作れない」「皿の上にはない物語を聞きとる」「雑誌を作るという仕事の魅力」といったぐあいだ。
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