戦争と機関銃と食品とザ大衆食の更新。
戦争は反対だ嫌だ、といいながら、アンガイ戦争について理解してないことに気がついた。
反対や批判をするには、対象を理解しなくてはならない。
そこで、第二次世界大戦をオベンキョウしていたら第一次世界大戦までさかのぼってしまい、さらに機関銃にたどりついた。
いま戦争といったら「近代戦」といわれるやつで、それは、どうやら機関銃という大量破壊兵器の登場から始まっているようなのだ。
機関銃が本格的に使われた最初の戦争が、アメリカの南北戦争で、そこから「近代戦」の歴史が始まったと見てよいようだ。
大量破壊兵器の登場によって、戦争のやり方が変わっただけでなく、いろいろなことが大きく変わった。人間も変わった。なにより、大量破壊兵器は、人間から人間性を奪った。
人間は、より残酷になり、人の死に冷淡でいられるようになった。大量破壊兵器による殺戮には、人と人が刃物で切りあったり拳銃や鉄砲で撃ちあったりするときのような個人は存在しない。
人間は、どんどん残酷になり、機関銃から始まった大量破壊兵器は、原子爆弾にたどりついた。そして大量破壊兵器を装備する国の平時は、どんどん戦場と変わらないぐあいになる。戦時でなくても、人間性なんかクソクラエ、子供のようなものは足手まとい、「能力」の低い者は邪魔なだけ、オレに従わないやつは敵だ排除。そういう日常でこそ、大量破壊兵器を使う思想や精神が養われる。
と、まあ、大量破壊兵器は、戦争だけでなく、社会や人間も変えてしまった。そういえば、最近、文化功労章をもらった人が「国威発揚を文化を通じて行っていく」と言ったとかで騒がれた。文化も、変ったのだな。
が、ことは、それほど単純に一方的ではない。
この大量破壊兵器をもたらしたのは、直接的には産業革命で、ま、産業資本主義とでもいうか。これが、大量破壊兵器の大量生産をもたらしただけでなく、生産を支える労働者大衆を生み、かれらの日常を支える食品の大量生産も実現した。
一方では大勢の人のいのちを奪う大量破壊兵器、一方では大勢の人のいのちを育む大量生産の食品。いつも戦争と平和の混在だ。
『機関銃と社会』(ジョン・エリス著、越智道雄訳、平凡社1993)の「機関銃と大衆社会」には、こんな記述がある。
「(ヨーロッパでは)十九世紀初めになると、新しいタイプの社会の出現が認められるようになった。歴史上初めて、土地は経済問題における絶対的な優位を失いはじめ、そして中産階級が独自の政治勢力として台頭しはじめていた。彼らは権力と富の増大によって、農業以外の生産物へのかなり多額の投資をまじめに考えることができるようになった。同時に、ヨーロッパの人口は増加しつつあり、それが貧しい小作農階層を町へ流出させ、生産の拡大に必要な労働力を膨張させた。町の人口がますます大きくなっていくにつれて、値段の安い、規格化された生活用品を求める、大きくて、均質で、簡単に利用できる市場が生み出された。この市場が発展するにつれて、生産を大きな工場に集中させることが可能になった」
この状況は、日本のばあい、明治末期から「大衆」という言葉が生まれる昭和初めぐらいになりそうだ。
日本では、土地の絶対的な優位は、それほど失われなかった。いまでもそうだが、これがメンドウなことになっている。
「社会の構造におけるこれだけ大きな変化は、戦争のやりかたにも必然的に多大な影響を及ぼした」
機関銃という、それまでなかった大量破壊兵器は、「実際に死傷者を減らすだろう」と考えられていたし、「ある意味で、いちばんすごい破壊者がいちばん人間を愛しているといえるのです」といった、えらく楽観主義的な思想が大量破壊兵器を持つことを支えていた。だけど、実際は、ちがって、第一次世界大戦、第二次世界大戦、とてつもない破壊をもたらした。
なのに、あいかわらず、核武装が戦争の抑止になるような話しがある。いちばんすごい破壊者になりたがっている連中は、人間を愛しているどころか、ろくでもない連中だということは、大量破壊兵器は戦争の抑止にならない事実とおなじように、いまでは明白な事実なのだ。
ところで、機関銃などの大量破壊兵器の導入をめぐっては「軍人気質」との衝突があったようだ。これは日本における近代化と「職人気質」や「武士道」やもろもろの「ナントカ魂」などとの衝突にも似ている。
そして、人びとは、近代化や機械化の現実と成果より、昔ながらの個人の精神や心構えや活躍の話を好む。「愛」「誠実」「勇気」「覇気」などなど。
大量破壊兵器を持つほど発達した社会の全体像を見失ない、全体像を見失うことで自分自身の位置も誤り、大量破壊兵器の時代にふさわしい戦争と平和の思想を持てず、力あるものに自分をあずけ、ドドドドドドッと戦争に向かう。いや、向かった。
はてさて、これからどうなるのだろう。どうするのだろう。
このあいだから、「ザ大衆食」のサイトをリニューアルしようと、あれこれ模索していたのだが、やっと方向と方法が決まったので、チョコチョコいじりだした。まずは、こんなところから。
http://entetsu.c.ooco.jp/hon/labo.htm
| 固定リンク | 0