61回目、東京新聞「大衆食堂ランチ」は浅草・君塚食堂。
告知が遅くなってしまった、先月11月の第3金曜日、17日に掲載になったものです。
すでにこちら東京新聞のサイトでご覧いただける。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyoguide/gourmet/lunch/CK2017111702000182.html
何年前だったかな、上野・浅草は国と都によるグローバル・シティ戦略とかのゾーニング政策によって、国際観光都市「下町」という役割を担わされた。
浅草をみていると、そういう政策がまちにおよぼす影響の大きさをマザマザとみる思いがする。ようするに、なんだかんだいっても、まちの発展も衰退も、国や自治体の政策しだいなのだ、ということだね。
この連載では、これまで浅草の食堂を2店紹介している。観光客でにぎわう雷門近くの「ときわ食堂」、観光のメイン浅草寺の西側のブロックで、観光より生活のにおいがただようあたりにあって、浅草に住む人や勤める人や生活的浅草詣を続ける人たちが多い「水口食堂」だ。
今回は、水口食堂と同じブロックだが、「奥山おまいりまち」という参道にあって、しかも真ん前には、浅草が大衆芸能の中心地であった名残りをとどめる、大衆演劇の木馬館と浪曲定席の木馬亭が並んである。
この通りは、近年の浅草国際観光都市化計画にしたがって、ふるい建物は姿を消し大きなホテルが建ち、君塚食堂がある長屋の建物の外壁は「伝統風」なデザインで覆われた。
ここには君塚食堂のほかに前田食堂という古い食堂がある。どちらにしようか迷うところだが、前田食堂は比較的メディア露出が多い感じなので、君塚食堂にした。もともと、こちらを利用することが多かったということもあるのだが。
この通りも観光地化が進んでいるとはいえ、観光客の多い雷門から浅草寺境内のにぎわいに比べると、その1%に満たないのではないかと思われる。
少なくとも、浅草寺境内で目立つ貸衣装らしい和服姿の外国人カップルや団体旅行客、バブリーな観光ファッションは、まったく見かけない。
君塚食堂には、英語のメニューもあって観光客の姿もみかけるが、こういうところが好きな人たちというのは、万国共通の雰囲気があるような気がする。すっかり場にとけこんでいるのだ。
近所の馴染みの勤め人らしい中年男性が、おでんとおにぎりを頼んでいた。「国際観光都市」の伝統風を背負わされた食堂に、そんなテがあるのも、いい。
おれは、以前に、ときどき木馬亭の浪曲のあとに、ここでチキンライスを食べながらビールを飲んでいた。今回は浪曲のあとではないが、またもや、それにした。チキンライスはとくにうまいわけじゃない、普通だ。それがいいのだが、グローバル化の渦中で、普通のもつ力や可能性を考えたりするには、ここでチキンライスを食べるのもいい。
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