『ユリイカ』1月臨時増刊号、遠藤賢司と大衆めし――「カレーライス」から
去る12月26日に発売になった、『ユリイカ』1月臨時増刊号「総特集=遠藤賢司」に、「遠藤賢司と大衆めし――「カレーライス」から」を寄稿した。
年末のある忘年会で、「エンテツがユリイカなんてイメージじゃないなあ」といわれた。ほんと、そうだよな。
エンケンこと遠藤賢司は、去る10月25日に亡くなった。享年70は、おれより若い。
そこで、追悼特集。
エンケンを追悼するにふさわしいみなさんがズラリ並んでいるなかに、おれだけお門違い場違いでスミマセンという感じで、加わっている。
「詩と批評」を謳う『ユリイカ』は、まったく縁のない存在だった。どこの世界のハイカルチャー。
編集者からトツゼン、「遠藤賢司と大衆めし」ということで論考をお願いしたいと依頼があり、エッセイならともかく音楽についても遠藤賢司についても論考を書けるほどの知識がないと返事をしたら、いや「堅めのエッセイ」であればといわれ、引き受けた。
だいたい、近ごろの出版の傾向としては、この分野はこの人に頼んでおけばアンシンという実績のあるライターに発注する「安全パイ主義」や「テリトリー主義」が普通だ。編集者もライターも、あるいは読者も、そういうある種の権威主義のサークルのなかで、ご安泰あんど閉塞。自由に羽ばたいてアブナイことに会うかもしれない危険はおかさない。
そういうなかで、大胆にも、まるで畑違いのおれに声をかけてくる編集さんにも興味があった。
けっきょく、20枚以上といわれ、書いたのは25枚。今年一番のボリュームで、一番難しかった原稿。論考風エッセイかエッセイ風論考か。
エンケンの代表曲「カレーライス」がらみだが、音楽的な話はナシ。
やってみると、視点が変わる効果か、これまで考えたこともなかった、いろいろなことが見えてくるもので、もう少し時間があったら、国会図書館まで行って調べたい資料があったのだが、残念ながら余裕がなかった。
「大衆食の射程のひろさ、深さに感嘆した」というような感想をいただいている。エンケンのうたが、その広さと深さをとらえていたということでもあるだろう。
■アルバム
不滅の遠藤賢司
■再録エッセイ
「ほんとだよ/猫が眠ってる」復刻によせて / 遠藤賢司
■インタビュー
土から這い出す純音楽 / 鈴木慶一(聞き手=湯浅学)
ふたりのエンケン / 浦沢直樹(聞き手=細馬宏通)
■歌の生まれるとき
遠藤賢司のライク ア ロォリング ストーン! / あがた森魚
マーチンD-35 / 岡林信康
昨日よりも育ち、昨日よりも若く、これぞ不滅の若さ / 中川五郎
歌と出会う / 友部正人
純音楽に全身全霊をささげた不滅の男 / 山本恭司
■純音楽の道
エンケンと話したかったこと / 田中泯
エンケンのこと / 夢枕獏
サイナラ、エンケン。 / 篠原勝之
純音楽家の美しさ / 山崎哲
ほんとだよ──言音一致の純音楽家 遠藤賢司 / 佐野史郎
エンケンの思い出 / 原マスミ
■対談
森羅万象変幻自在のエンケン / 湯浅学×岸野雄一
■遠藤賢司の旅
銀河鉄道の夜汽車のブルース / 遠藤ミチロウ
エンケンさんとあまちゃんと / 大友良英
ギター1本勝負! / 奈良美智
いきてるよ / 山崎春美
遠藤賢司さんとの思い出 / 戸川純
エンケンさんからもらったもの / 曽我部恵一
■歴史のはじまり、そして……
早すぎた芸術家、遠藤賢司 / 東谷護
「ほんとだよ」からはじまった純音楽の旅 / 北中正和
「日本(ニュー)ロック史」の形成とエンケン / 輪島裕介
一九八八年の遠藤賢司 / 南田勝也
■彼はいつでも最高なのさ
エンケンさんちょっとイイ話(第1回) / 根本敬
浅草キッドと東京ワッショイ / 水道橋博士
透きとおって、音になる / いしいしんじ
僕とエンケンさん / 森信行
裸の王様 / 湯川潮音
■君も猫もみんな好きだよ
んの彼方に / 細馬宏通
遠藤賢司は最初から遠藤賢司であった──茨城県県北地域で育まれたものと、彼のなかに流れ続けたもの / 大石始
遠藤賢司と大衆めし――「カレーライス」から / 遠藤哲夫
遺されたブックリスト / 本山謙二
■資料
遠藤賢司略年譜 / 柿谷浩一
青土社のサイトは、こちら。
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3114
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