鬼子母神通りみちくさ市、談話室たまりあ+佐藤亜沙美。
きのうの日曜日、わめぞ一味が企画運営する鬼子母神みちくさ市へ行った。古本市、常連の塩爺は、一度死にかけた身なので、寒さを用心し出店していなかった(かあちゃんにとめられたらしい)。そのかわり、ということでもないか、岡崎武志さんがひさしぶりに出店していた。みどりさんは、もうすっかり常連だ。
古本市はざっと見て、13時半からの談話室たまりあトークの会場へ。
今回のゲストは、ブックデザイナーの佐藤亜沙美さんだ。顔を拝見したら、前回、角田光代さんがゲストだったとき、3人がけのテーブルで、おれが座ったのと同じテーブルに椅子一つ空けて座っていた人だった。
おれは、なんちゃってライターだから、あまり出版関係のことは知らない。佐藤亜沙美さんの名前は、今回初めて知った。祖父江慎さんの「弟子」ってことになるのかな、祖父江さんの会社でデザインの仕事に就いていた。ってわけで、かなり手広くブックデザインの仕事をしている、『QJ クイック・ジャパン』のデザインもやっている。
佐藤さんは、絵を描くことぐらいしかできなかった、なんだか迷っているときに、本屋で祖父江さんのデザインを見て「これだ!」と思い、それから祖父江さんのトークなどがあるたびに追っかけ、ついに雇ってもらうことができた。と、話す。
りあちゃんこと小泉りあさんは、本を読まない人だったのだそうだ。映像と音楽。前回、角田さんとのトークで、本を持つようになったばかり。一方、たまちゃんこと姫野たまさんは、すでに文筆で成り立っているほどで、出版社もガッチリついている。
佐藤さんがデザインした本を見ながら、ブックデザインという仕事とその進め方から入った3人の話は、「アメリカンドリーム」を生きている感じだった。「アメリカン」というのは、おかしいかもしれないが、ほかにいいようがない。日本のビジネス環境は、だいぶアメリカンになっているし、もっとそうなるんだろう。「個」の意志・方法・結果の追求、すべては、いわゆる「自己責任」という「アメリカ流」だ。
たまちゃんは、「戦略的」だ。りあちゃんは、たまちゃんは「自分を客観的に見られる」という言い方をしていたが。りあちゃんは、それができないかわりに、この6月に地下アイドルをやめてタレントに、そしてアメリカ公演をして、ストレートに結果を表現するアメリカ人の会場で、何かをつかんだ感じだ。
佐藤さんは、なにしろ出版業界とのつきあいだから、もっとも日本的ビジネスのしがらみがつきまとっているようだが、ニューヨークのブルックリンも見て、10年後の日本(とデザイン界)を考え、世界へ出ていくことも考えているようだ。
そのあたりは3者3様であり、だから話はおもしろいようにまわった。こういう話をもっとあちこちでやれば、本屋へ行ったことのない人は行って本を手にとってみたくなるだろう。りあちゃんも、最後にそういうまとめのような感想をいった。
いわゆる「本好き」や「業界人」の話なんかでは、価値観の押しつけになってしまい、ダメなんだな。それにしても、たまりあの、ある種の、破壊力は効果的だ。リクツを破壊し、グイッと持っていく力。あれは舞台で身につけたコミュニケーション・スキルなんだろうか。
15時にトークが終わって、古本市をざっと見たのち、地下鉄で新宿3丁目へ出た。サンパークの「はやしや」で、落ちつこうと。うまいぐあいに、靖国通りから歌舞伎町方面が見える窓側の席が空いていた。昼めしを食べてなかったので、ハンバーグ目玉焼きライスとビール。
外を見ていると、自然に昔を振り返ることになる。靖国通りのビルはかなり変ったが、かつてよく行った焼肉の東海苑や餃子の大陸は、まだあるし、さくら通りの入口の左側にある「佐野屋」のビルの1階はファミリーマートになったが、もとは酒屋で、さくら通り側で立ち飲みができるようになっていた。そこで、コップ一杯50円のアリスウィスキーをひっかけてから、歌舞伎町の中の飲み屋をまわる。合成酒のアリスがきくから、安く酔っぱらえたのだ。一日おきの泊りこみで歌舞伎町にドップリつかることになった宮田輝事務所のあったビルは建て替えになったが、細い通りをはさんだ隣のビルはまだそのまま残っていて、その4階だったかな?のワンフロアは、うぐいす嬢のトレーニングと控えのスペースだった。とかとか、思いではつきない。
隣の席で、話から風俗関係の仕事をしているにちがいない男と女が、初めてのデートで、酒も飲まずに、二人ともオムライス。そして、男は、このあとホテルへと誘っている。オムライスを食べながら。女、なかなか態度をはっきりさせない。明日の朝9時から用があるし、とかなんとか。おれが入ったとき、すでにオムライスがテーブルの上にあった、そして、おれはこのあと二人はどうなるか気になりながら先に出た。
みちくさ市の打ち上げは、まいどのサン浜名で18時からだった。たまりあと佐藤さんも参加。なんと、石丸元章さんが、10月の初めごろ、脳卒中か何かで倒れたのだそうだ。ツイッターをよく見ていなかったので知らなかった。リハビリで回復するらしい。大事にいたらないようで、よかったが、というわけで、今回は姿なし。ピスケンさんも、古本市で見かけたときは前より顔色はよかったようだが、姿なし。
はやしやで下地ができていたから勢いよく飲み、けっこう酔った。最初は、お笑いの話をしていた。まわりは80年前後の生まれの人たちだったから、90年代以後のことが多かった。70年代までは、テレビは家族で見るものだったが、この人たちぐらいからは、そうではなくなる。テレビ番組も、ファミリーから個人へシフト、お笑い芸人も消長がありながら競争が激化する。こういう動きは、食文化とも関係する。ってなことを考えていた最中だったので、ほほう、やっぱり、と思うことがあった。、
ふらふら移動し、飲んで、あれこれおしゃべり、瀬戸さんにエロを書いたことを突っ込まれたが、もう雑誌の名前を思い出せない状態。けっこう酔ってから、佐藤さんの夫という方が前に座った。この方は芥川賞作家の滝口悠生さんで、あまり本を読まないおれは、まったく知らないのだったが、ちょっと話しているうちに、なんだか魅力的な人に思え、印象に残った。せっかくの機会だったのに、酔ってしまって、もう限界だった、残念。おすすめの著書を2冊、聞いたのは、酔っていても忘れなかった。
1冊は新潮文庫で手に入りやすい『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』、それから、おれが食がらみのライターってことで、それならこれをぜひといわれたのが『茄子の輝き』だ。おもしろいタイトルだ。
はあ、よく覚えていた。必ず買って読もう。
もう、この話をしていたころは、かなり酔いがまわって、自分が何を話しているかわからないナと気づく状態だった。以前だと、それからさらに飲んで、泥酔記憶喪失状態で帰ることが多かったが、近ごろは、よほど体力低下を自覚しているのか、そこで飲むのをやめて帰るようになった。ちゃんと身体が学習したらしい。
前回のみちくさ市。
2018/09/19
鬼子母神通りみちくさ市、たまりあ×角田光代、東京キララ社。
大事なことは歌舞伎町で学んだ。ってほどでもないが、歌舞伎町と出あってよかった。
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