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2018/12/05

「しあわせ」。

ことし亡くなった知人は、二人。いま、もう一人、おれより10歳若い女性が、病床で年を越せるかどうかわからない状態でいる。

亡くなった二人は男性で、一人は43歳という若さだった。4月、突然の訃報だった。大学を出たあと、「限界集落」だらけの山間の町で、両親と暮らしながら役場に勤め畑もやっていた。明るい活動的な人だった。訃報に接してから、サボりがちだったツイッターを見たら、亡くなる前に「頭痛がする」というツイートをしていた。そのとき医者へ行っていたら、と思うが、なんにせよ、もうもどらない。

もう一人の男性は、おれより10歳上で、「食堂のとうちゃん」だ。毎年1、2度は行っていたのだが、だんだん出不精になったこともあり昨年は一度も行かなかった。

8月に亡くなり、すぐ知人が知らせてくれた。半年ほど前から入退院を繰り返していたそうだが、おれは最近行ってなかったから知らなかったのだ。

創業のおやじの跡をついで妻と食堂を続け、すでに息子夫婦があとをついでいる。とうちゃんは夕方になると店のすみで酒を飲んでいるだけだった。

じつは今日、風呂に入りながら、ことし亡くなった人たちを思い出していたのだが、なぜだか、このとうちゃんの母上つまりばあちゃんを思い出した。

ばあちゃんが亡くなったのは、いつだったか思い出せない。とにかく2000年代後半で、92歳ぐらいだったはずだ。あるときそのばあちゃんが店にいて、近所のばあさんと顔をよせあってヒソヒソ話をしていた。二人とも、眉根にしわをよせ深刻な顔をしていた。

きくともなくきいていると、「まさこさまだって、あんなぐあいだからね」「なにがしあわせかわからんよ」「わたしたち東京の真ん中の大きな御殿に暮らしたことないけど、まさこさんよりしあわせだよ」「そうだよ、いじめはいやだね」「おかげさまで、こんなとしになってもしあわせだね」「ほったらかしだからね」といったぐあいだった。

「まさこさま」とは「雅子さま」のことで、当時は、帯状疱疹だのなんだのだと騒がれていた。その原因が周囲のいじめであるような報道もあって、ばあさん二人はそれで「しあわせ」を考えたのだろう。

それからしばらくして、ばあちゃんは寝たきりになり、亡くなった。

とうちゃんも、ばあさんたちが感じていたしあわせを生きたにちがいない。

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