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2019/02/27

東京新聞連載「エンテツさんの大衆食堂ランチ」76回目、深川・七福。

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またもやここでの掲載が遅れに遅れてしまった、これは先月の第三金曜日18日朝刊のぶんだ。

すでに東京新聞のサイトでご覧いただける。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyoguide/gourmet/lunch/CK2019011802000184.html

たまには正月らしい店名の食堂にしようと、「七福」にした。住所は白河だが、昔から深川と呼ばれている地域で、周囲には深川七福神がある。

七福は、1995年の『大衆食堂の研究』にも載っている。「『七福食堂』――江東区高橋のたもとにある。いかがわし度2。暖簾に「実用」の文字がいい」というぐあいだ。

「高橋のたもと」というのは、「たもと」に近いぐらいで、すぐそばではない。ところが、おれ自身も「たもと」にだまされてしまい、以前に再訪したときには、高橋のたもとすぐのあたりをうろうろし、住所は控えてなかったし、探したが見つからなかったことがある。

とにかく、このあたりは大変貌した。とくに七福がある清洲橋通りの大きな交差点の周辺は30階ぐらいはある高層マンションがニョニョキ建って、空が広かった下町の面影はない。

七福も、二階建ての木造から建て替わった。外見は変わったし、中も壁は板張りで「デザインされた」内装になったが、そこまで。

暖簾と看板の「実用洋食」は、そのままだし、実用のイスとテーブルで、実用の洋食を食べる。

かつて、というのは半世紀以上は前になるか、「実用洋食」が流行ったらしい。まだ詳細に調べてないが、そういう記述は見かけた。

「実用」という言葉の意味は、なかなか深長で、このばあいの判断は難しいが、おそらく、当時ごちそうで高級なイメージだった洋食に対してのことだろう。

1960年前後ぐらいまでは、東京の洋食は「ハイカラ」などといわれ、けっこう上位概念だったのだ。

七福の「実用洋食」は、大いに納得する。日替わり定食の盛り合わせを始めとする各種盛り合わせメニューの充実に、なんだかお店の洋食への「熱」を感じる。

オムライスを食べたことがないのだが、一人で入ってくる近所の会社員らしい女性たちは、ほとんどこれを食べている。

そのオムライスからして、たいしたボリュームだ。定食のごはんの量も多く、おかずのボリュームもある。フライ類は、ボリュームがあっても、油が気になることはなく、サクサク食べられるが、おれはめしの量にまいってしまう。なのに、まわりでは、大盛りを注文する客もいる。くそ~っ、大食いできないジジイになってツマラナイな~と思うのだ。

このあたりは、かつては、中小零細の事業所が多かった。いまでもビルの一階が工場だったりするところもある。

七福の客には大盛り確率が高い作業服姿の労働者が多くみられる。大盛を食べるスーツ姿の労働者もいる。

ガッチリめしを食いたい人はいるのである。それは「実用」という「文化」を支える人たちでもある。

そして、「実用」の「文化」によって、さまざまな「産業」や「文化」が支えられている。

実用万歳。

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