過剰の中の飢餓感。
近年はやりのSNSなるもの、おれが手を出したのは、ツイッターは東日本大震災直前の2011年の2月、フェイスブックはもう少しあとだ。
もともとモノグサだから、面白半分の利用であり、情報蒐集や情報発信やコミュニケーション(人脈づくり)など、いわゆる「目的」といったものはない。ヒマまかせ気分まかせで、放置しだすと、それがあるのも忘れ、覗くこともないアリサマだった。
今年になってから、3月なんぞは、一度つぶやいただけだ。
しかし、癌告知されてから、毎日「規則正しく」ツイートするようになった。
生活が変わったこともあり、というのも、ほぼ決まった時間に朝昼晩のめしを食べ薬を飲まなくてはならない「規則正しい生活」になった、その生活ぶりを簡単に記録しておくのもいいかなとおもった。
毎日、「朝飯くって薬2種3錠のんだ」といったぐあいに、「飯くった」「薬のんだ」のツイートをするようにした。
おかげで日に最低3度はツイッターを覗くようになったが、タイムラインを全部見るのはメンドウだ、たまたま開いたところをチラチラ見て、ツイートするだけ。
フェイスブック(FB)のほうは、すっかりご無沙汰だ。だいたいFBを利用している友達は、ブログのように長い文章を書くやつが多いし、構造上画像が占拠するスペースも大きく、開いた瞬間には一人分のテキストや画像しか目に入らないことがほとんどで、ようするにタイムラインを見るのにスクロールの手間と時間や俊敏さが必要だ。おれのようなモノグサと老化が進行しているものには相性が悪い。
パソコンに長時間むかっているのがシンドクなってきたから、インターネットとの付き合いを少なくするため、フェイスブックかツイッターかどちらかにしようと思い、軽くいけるツイッターを選んだ。
いまでは、ツイッターときどきブログというぐあい。
ひさしぶりに毎日3度はツイッターを開くようになって気がついた。ここ数年のうちに、人びとのツイートの様子がずいぶん変わった。
フォローしているアカウントによっても違いがあるかもしれないが、ヒマつぶしやアソビ、あるいは生活のついでといった、つまり「余裕」というのかな、それがある人やツイート(リツイートも含め)が少なくなった。
そう、テキトーな「遊び」や「余裕」や「生活のついで」が、少なくなっているのだ。
ニコチン中毒者のチェーンスモーキングのようにツイートを連打するなど、ある種の「情報過敏症」とか「情報神経症」といった感じの人も見かける。チョイと一息つきながらのほうがいいんじゃないかなあと、おせっかいな気持がわくこともある。
仕事がらみはもちろん、趣味であっても、ターゲットを意識した意図的なツイート、フォロワーや「いいね」などの数をねらったつぶやき、それも、あきらかに「ツイッターの上手な使い方」のようなものを参考にしているテクニックとわかるものが多くなった。文の書き方も。
「ツリ」や「フック」など、広告屋のようなえげつない手口も、けっこう普通になっている。つまり、お互いに承知してやっているし、それをうまくさばくのも、ツイッター世間の上手なわたり方であり、何らかの「得」を稼ぐ方法なのだ。そのあたりがヘタだと、ツイッターには向いてない人、という評価をされたりする。
すべてのメディアと情報は消費の対象になっているのであり、ツイッター世間もその方向で、洗練され成熟している、ってことになるか。まるで「全社員営業」「全社員マーケッター」という感じでもある。ただ、「社」のためではない(「社」の業務としてやっている人もいるが)、「自分」のためだ。「自分愛」の消費とも連動している。
より効果的にテーマやジャンルをしぼることで、ある分野のマーケット・リーダー的存在になることをめざす。ツイッター世間、インターネット世間、出版世間、映像世間…での成功をめざしてお手軽なメディアミックス・マーケティング。
まだあまり開拓されてない新鮮な情報が転がっている、よりニッチなテーマやジャンルへ、今日も。
ものすごい処理できないほどの情報過多の中で情報の飢餓感を満たそうとする、終わりのない循環が続いている。
「インスタ映え」が急上昇したとき、撮影のためだけに飲食店へ行き撮影し、モノは残す行為が批判の対象になったが、街や店やモノやヒトなどの情報の仕入れも循環に欠かせない。そして経済がまわる。
大勢に価値を認められたい、大勢が価値を認めているものに遅れをとりたくない、どうだ行ってきたぞ、ハズしたくない、こんなネタはどうだ、どうだおれのセンス、注目してくれ、忘れないでくれ、おれにも一言いわせてくれ、さまざまな飢餓感や強迫観念が渦を巻き拡散する巨大な情報宇宙の彼方には何があるのだろう。
なんだかSFの世界みたいだ。
カタチを残さないがゆえに無限消費循環が可能な飲食や旅は、かっこうなネタになる。もう草刈り場だ。そのうちにペンペン草も生えなくなりそう。
当ブログ関連
2020/06/26
そして誰もが「評論家」になった。
https://enmeshi.way-nifty.com/meshi/2020/06/post-b07119.html
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