ガンの本。
先月19日のこのブログは、「今日は、じつは、『スペクテイター』最新号「土のがっこう」について紹介する前ふりのつもりで書いた」と終わった。
それが、そのままになっている。
今日もまた違う。まだ、その本題ではない。
「ガンの本」のことだ。
癌になって、何か本を読んだか、どんな本を読んだかと聞かれることがある。
一冊も読んでない。
読もうと思ったこともない。読む気も起きない。
うちの本棚を見ても、タイトルに「ガン」や「癌」や「がん」の文字がある本は一冊もない。
癌になった人が、「癌とのつきあい」みたいなことを書いているらしい本が一冊だけある。
内澤旬子さんの『身体のいいなり』、朝日文庫版だ。
あるけど、まだ読んでない。
3,4年前だったと思うが、癌検診で乳癌が見つかって治療中の知り合いの女性が、「『身体のいいなり』を読んでおいてよかった」といった。
彼女は、乳癌が見つかる前に読んでいたのだ。
その話を聞いても、まだ読もうとは思わなかった。
そのうちに読もうと思ってはいる。なにしろ本棚にあるのだし。内澤旬子さんの本だし。
今日、大宮のブックオフへ行った。ガンの本は、ずいぶんたくさんある。
タイトルを見ても読む気がおこらない。
内容が想像つくということもあるが、そういうことなら、おれは主治医に話を聞くねと思う。
「話を聞く」というより「問答」だ。
おれの癌についてよく知っているのは、おれをのぞけば、主治医だけだ。
そんなことを考えながら棚を見ていると、目にとまった一冊があった。
『ガン入院オロオロ日記』東海林さだお(文藝春秋、2017年)。
おっ、東海林さだおもガンになったのか、おっ、手術をしたのか、ごくろうさん、と手に取ってパラッと見ると、「初体験入院日記」ってことで、「Ⅰ がんと過ごした40日をふりかえる」「Ⅱ 病院は不本意でいっぱい」「Ⅲ ヨレヨレパジャマ族、威厳ヲ欲ス」の話が並んでいる。
279ページのうち、52ページだけ。
見たところ癌の話はあまりなくて、入院中の「病院風俗観察記」といったところだ。
例によって、行替えだらけのテキスト。
210円だったから、初めての「ガンの本」として買うことにした。
読んだ。
よくある「闘病記」だの「治る」だのといった「ガンの本」とは違うのがいい。ようするに、例の調子。
その影響で、今日のブログは、行替えの多いテキストになっている。
ちょっとおどろいたことが一つ。
4時間かかる手術の日の朝、東海林さだおは病室で手術着だけになり(ノーパン)、「エレベーターに乗り、廊下を歩いて手術室に向かう」。
そして、手術室前に着くと、「これから手術を受ける人が20名ぐらい並んでいる」のだ。
順番に手術室に消えていく。ということは、手術室が20ぐらいあるということだ。
そんなに一度に手術ができるのか。どこの病院だ。東海林さだおほどの有名人が入院するのだから、きっと有名な大病院なのだろうけど。
同じフロアで、20人もが手術している光景を想像する。なかなかのものだ。
「文明の力」ってものか。「文明」すごい。ウゲッ。
そういうわけで、『スペクテイター』最新号「土のがっこう」の紹介は、明日か明後日か…。
この本、すごく大切なことが書いてあるし、1980年代ぐらいに土と縁があって少し深みにはまり、土や土壌とその文化などに関する本はいろいろ読んできたけど、よくできたガイダンスブックだと思う(ちょっと校正ミスらしい「玉に瑕」があるけど、まがい物の玉じゃない)。
だいたい、いきなり特集の扉から、「説文解字」によった「土」の漢字の図解に、グッとひかれる。
身近な大切なことなのに、まだまだ、知らなすぎる。
食も癌も新型コロナウィルスも、生命が根を張っている「土」から考えよう。
当ブログ関連
2020/11/19
都市的風景と農的風景の断絶、『スペクテイター』最新号「土のがっこう」。
https://enmeshi.way-nifty.com/meshi/2020/11/post-2cfd79.html
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