今年の読書と本。
今年は「本を読んだ」という気分がある。
「必要趣味」と「自由趣味」という軸に従えば、自由趣味の読書が多かったということになるか。
つまり、必要趣味の本は、いくら読んでも、「仕事脳」がぶよぶよし、「読書」の気分ではない。ということになるようだ。
別の軸、たとえば鶴見俊輔がいうような、「文明批評として読む」と「人生の一部として読む」で比べれば、後者の小説が多かったともいえるようだ。
「多かった」といっても、絶対数ではない。おれの小さな日々のなかで、どちらかといえば読書量の少ないなかでの、「ていど」のことだ。
津村記久子の『サキの忘れ物』(新潮社)の発行が6月25日で、7月初めに買って読んだ。これが発火点だった。
面白くて、味わい深くて、しばらくほっておいた津村記久子の本を、手持ちのものから読み返した。
図書館で、『ポースケ』(中央公論新社、2013年)『とにかくうちに帰ります』(新潮社、2012年)『やりたいことは二度寝だけ』(講談社、2012年)を借りて読んだ。
9月になって、図書館で『エヴリシング・フロウズ』(文藝春秋2014年)を借りた。
朝日新聞出版から2012年11月に発行の『ウエストウイング』に登場する「やまだヒロシ」のその後を知りたい、というようなことをどこかの編集者にいわれてこの小説を書いた、というような話を何かで読んだ。もしかすると、『エヴリシング・フロウズ』のあとがきにあったのかも知れない。
とうぜん気になるから、『ウエストウイング』を図書館で借りて読んだ。『エヴリシング・フロウズ』では中3の「やまだヒロシ」は、この本では小学6年生。主要登場人物の一人、あるいは主人公を構成する一人だ。この小説は「場」が主人公のように話が展開する。
とにかく、小学6年生と中学3年生、そしたら高校3年生が気になった。『ミュージック・ブレス・ユー!!』のオケタニアザミだ。これは角川文庫版を持っているから、もう一度、4回目ぐらいになると思うが読んだ。
ついで、大学卒業間近のホリガイを読みたくなった。枕元の本棚から『君は永遠にそいつらより若い』(ちくま文庫)を引っ張り出して、これも何度目になるか、読んだ。
これで、小・中・高・大の、しかも卒業年度のシリーズになる。「シリーズ」とは謳ってないが。
喜寿で癌で先が短くなっているジジイの頭のなかだけ、「青春」がざわざわ。
「青春小説」という言葉がある。中学3年生ぐらいなら引っかかりそうだが、小学6年生は、どうだろう。でも、「青春」になりそうでもある。
図書館で『アレグリアとは仕事はできない』(筑摩書房2008年)を図書館で借りて読んだ。これは、「仕事系」だ。それでまた、手元にある「仕事系」の文庫本『ワーカーズ・ダイジェスト』(集英社文庫)『ポトスライムの舟』(講談社文庫)『カソウスキの行方』(講談社文庫)を読み返す。
同じ頃、図書館の棚の前をふらふらしていたら、四方田犬彦の『ハイスクール1968年』(新潮文庫2008年)が目に止まり、「おっ、青春だ」と借りて読んだ。これはエッセイということになるか。ちょっとはずれた。偶然読んでしまったという感じ。
同じ頃、やはり図書館の棚の前をふらふらしていたら、佐藤亜紀の『スウィングしなけりゃ意味がない』が目に止まった。
佐藤亜紀は『ミノタウロス』 (講談社2007年)を買って読んで以来、ご無沙汰している。パラッと開いて見たら、「青春だ」しかも「ジャズだ」、それもナチの支配下。借りて読んだ。ひさしぶりだが期待を裏切らない佐藤亜紀。これは手元において何度でも読みたい、角川文庫版を買って読み直した。須賀しのぶの解説。面白さとまらず、『ミノタウロス』まで引っ張り出して読み直した。
『サキの忘れ物』は、これまでの到達点、さらに「青春系」「仕事系」をこえ、いろいろな枠組みをこえ、あたらしいこれからのステージのお目見えという感じでもある短編集だ。
その一編のタイトルである「サキの忘れ物」は、新潮文庫の『サキ短編集』。読んだことがない。買ってきた。一度に読むのはもったいないから、病院の待ち時間の読書にしている。21編中4編まで読んだ。
そして、いま、初めての西加奈子を少しばかり。『円卓』(文春文庫、2013年)、小学3年生のこっこ。『漁港の肉子ちゃん』(幻冬舎文庫、2014年)、小学5年生のキクりん。
いやあ、おれとしては、よく読んでいる。
必要趣味のほうは、いろいろだが、目下の関心は、「大衆食」「モダニズム」「民藝(運動)」というあたりのつながりと断絶などを、ポテトサラダで探求することだ。
こうして、新型コロナと癌の年は暮れようとしている。
当ブログ関連
2020/08/16
「食べることを食のマウンティングから切り離したい」
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