料理と情報と文化。
ある料理に含まれる情報と文化というのが気になって、手元にある資料をパラパラ見ていたら、『情報と文化』(情報文化研究フォーラム・編/松岡正剛+戸田ツトム・構成、NTTado1986)に、このような文章があって、おどろいた。
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一九六八年、ブラジルとメキシコの五〇年代から六〇年代にわたる"現代化"を広範に調査研究してきたジョセブ・カールは、現代人の特徴として次のような興味ぶかい一〇項目があげうることことを報告した。
ここで"現代化"の研究とは、交通や機械やファッションによる都市のコミュニケーションの変質にともなう住民の意識選好度の変化を検討することである。ここにはよい意味でもひどい意味でも、いわゆる現代人のアイデンティティがよくあらわれていよう。
①…………将来の計画を立てようとする行動性
②…………役割にもとづく生活機会の階層化への努力
③…………低次の地域的階層化
④…………職業の優先と成功への意図の露出
⑤…………親族との弱い結びつき
⑥…………個人主義と自己経歴の追求
⑦…………部外者に対する不信感
⑧…………マスメディアへの過度の依存
⑨…………都市主義への傾斜
⑩…………大企業と官僚性への屈従と労働の容認
いささか強調しすぎている点やサラリーマン型にかたよっている点が目につくが、ここにあげられた特徴は二〇年ちかくたった今日なお充分に通用するものだろう。
ブラジルやメキシコの現代にあてはまるばかりではない。「低次の地域的階層化」といい、「個人主義と自己経歴の追求」といい、また「マスメディアへの過度の依存」といい、日本の今日や明日にもあてはまる。
(『情報と文化』情報文化研究フォーラム・編/松岡正剛+戸田ツトム・構成、NTTado1986 P238)
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「日本の今日や明日にもあてはまる」といっているのだけど、この当時から30数年がすぎも、まったくこの通りで、そのまま突き進んでいる。
この本の最後は、「すこし遅きに失するような気もするが、情報とシステムをめぐる議論はこれからこそ本格化をめざさなければならなくなっている」と結んでいるが、もう完全に、遅きに失したような気がする。
料理も、こうした“現代化”の中にあった。
そして、毎日、食って生きているのだ。
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