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2021/06/08

『スペクテイター』48号「パソコンとヒッピー」。

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パソコンとカウンター・カルチャーの関係を解き明かした力作。

スティーブ・ジョブスがヒッピーだったとか、ヒッピーの影響を受けたとかは、一時話題になったが。その話も出てくる。

2019年44号「ヒッピーの教科書」、同年45号「日本のヒッピー・ムーヴメント」を特集してきた『スペクテイター』の最新号は「パソコンとヒッピー」だ。

4日ほど前だったかな、編集部からの郵送でいただいた。赤田祐一さんのご厚意によるものだろう。ありがとうございました。

この特集タイトルには、少し意表を突かれたが、読んでいるうちに思い出したことがたくさんあった。過剰に加速する情報環境の中で、知識を積み重ね編んでいくことを忘れがちだ。それを『スペクテイター』編集部がやってくれている。ということだね。

60年代70年代のカウンター・カルチャー(対抗文化)については、「ヒッピーの教科書」と「日本のヒッピー・ムーヴメント」に詳しい。ただふりかえるのではなく、いま、の視点でとらえなおしている。まさに、編集だ。

そのカウンター・カルチャー、「ヒッピーには二つのタイプがあった」。

一つは、日本では、こちらのほうがよく知られている「自然回帰」を志向しテクノロジーを否定するタイプであり、もう一つはその逆、「テクノロジーの進歩が不可避的に社会を変えるというアナキストで、ジッピーのタイプ」(本書38)

『スペクテイター』2020年47号「土のがっこう」は、自然回帰志向の流れに位置するだろう。そして、今回は、後者の流れになる。そう、おれは読んだ。

この二つのタイプは、同じ根を持っている。とくに近代文明に対抗し、人間性の回復を志向することだ。

ヒッピーが、どうパソコンにつながっていったか。その発想からテクノロジーまでを語る「パソコンの発生とヒッピーの発想」関根美有(作画)+赤田祐一(原作)は、ほんと、ややこしい関係を上手にまとめていて、力作だ。まさに、編集力。

もくじで見ると。

0 「全地球(ホールーアース)」という世界観を求めて。

1 コンピュータとヒッピーを結びつけた『ホール・アース・カタログ』

2 ターニング・ポイントだったヴェトナム戦争

3 LSDとコンピュータは同じツールだ

4 サンフランシスコ・バークレーは学生運動とヒッピー文化発祥の地

5 コンピュータはソ連とアメリカの冷戦で成長した

6 「ハッカーは遅れてきたビート族、初期ヒッピー・カルチャーと同じ人種だ」とスチュワート・ブランドは笑った

7 「人民のためのコンピュータ」という思想が生み出された

8 パソコンは人と人がつながるための有用な道具だ

9 アルテアの衝撃。ミニ・コンがビートルズを唄った日

10 ハイ・テク時代のトリックスターがハッカーだった

LAST CHPTER もっと共生的に。人間とパソコンの関係

RE THINK われわれはスローなギークになれるか?(編集部による考察)

6と7のあいだに、講師:桜井通開(文とイラスト)による「コンピュータのABC」が「進法」やら「計算の歴史」やらコンピュータの仕組みのABCを解説、勝川克志の絵による「クロニクル・テクノロジー 1960年—80年」が、色ページで。

ロング・インタビューが圧巻。

「自然派ヒッピー?電子派ジッピー?真のカウンター・カルチャーを体現するのはどっちだ?!」ってえことで、能勢伊勢雄が登場。

能勢伊勢雄は、1995年に第三書館から発行の『サイバーレボリューション パソコン対抗文化の未来』金田善裕・編、に「カオスの縁」という論考を寄稿しているそうだが、こういう人を「発掘」してきて、『サイバーレボリューション』の先駆性やら能勢をめぐるジッピーの生態やら活動やらヒッピーとジッピーの比較やらを語る。

ここで、ここだけではないが、「サイバネティックス」という言葉が出てきて、おう、そうそうとおれは思い出した。

たいして本のない本棚を探して、ノーバート・ウィーナーによる『人間機械論 第2版 人間の人間的な利用』(鎮目恭夫/池原止戈夫・訳、みすず書房1979年)を見つけたのだった。サイバネティックスについては、杉田元宜の『サイバネテックスとは何か 機械・生体・社会と比較システム論』(法政大学出版局1973年)で知って、この本をすり切れるほど読んで本棚のどこかにあるはずだが見つからない。

もうずいぶん、この言葉から遠ざかっていた。記憶の底に沈殿。この『スペクテイター』を読まなかったら、そのまま忘れてしまっていたかもしれない。

当時、仕事にしていたマケーティングとも関係あって、サイバネティクスにのめりこんだ。忘れても、身体のどこかに血となり肉となり骨となり、うっすらただよっているような気もする。

それはそうと、最後のロングインタビューは、「”指紋”と”コンピュータ”の知られざる関係」ってことで、高野麻子が登場する。「監視社会」や「監視文化」など、近未来も視野に入れた現代的な課題が提起されている。


みんなが使っているからと何気なく使っているパソコン、いつのまにかハマっているSNSやLINE。そこの、あなた!いや、このようにブログを書いているおれもだ。

この特集を読んで、よーく、考えてみよう。1100円は、すごくお買い得だよ。マジで。

2020/07/11
これからの台所をおもしろくするには。
https://enmeshi.way-nifty.com/meshi/2020/07/post-511a0d.html

2020/12/06
『スペクテイター』最新号「土のがっこう」。
https://enmeshi.way-nifty.com/meshi/2020/12/post-c65d23.html

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